新エネルギー・産業技術総合開発機構と長瀬産業はこのほど、食品・化粧品・医薬品など幅広く利用が期待される希少アミノ酸「エルゴチオネイン(EGT)」の生産性を、NEDO開発のスマートセル技術の活用で約1000倍に向上させたと発表した。これは世界最高レベルの生産効率で、安価で高純度な環境配慮型EGTバイオ生産プロセスの確立が可能となった。
EGTはキノコなどに微量含まれる抗酸化能に優れた希少アミノ酸。人にはFGTを利用する仕組みがあるため、食事摂取による脳機能の改善、皮膚、眼、各種臓器細胞の酸化ストレスからの保護が示唆される。天然物からの抽出では含有EGTが微量、化学合成では環境負荷が大きいなど、安価で低環境負荷の製法は未確立だ。
NEDOは2016年から、植物や微生物細胞の物質生産能力を最大限引き出す生物合成技術「スマートセル」を構築し化学合成では困難な有用物質の創製、化学合成を上回る生産性を目指す「植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発」事業(スマートセルプロジェクト)を推進してきた。長瀬産業は2015年に安価で安定供給可能な環境配慮型バイオ生産プロセスの開発を始め、昨年度から同事業に参画して研究開発を加速してきた。
今回、同プロジェクト独自のスマートセル基盤技術「酵素改変設計技術」「代謝経路設計技術」「HTP微生物構築・評価技術」「輸送体探索技術」により細胞内の生産反応の最適化に成功。生産効率は世界最高レベルの従来比約1000倍を達成した。
今後、同生産菌株を活用し早期の事業化を進め、化学合成が難しい有用物質の創製、低コスト・低環境負荷の生産プロセスである「スマートセルインダストリー」の実現に貢献していく考えだ。