日本曹達と京都大学 Pt‐W水素発生電極触媒で世界最高効率

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2020年11月9日

 日本曹達と京都大学はこのほど、新たに白金(Pt)とタングステン(W)の固溶合金ナノ粒子(Pt‐W固溶合金)を合成し、水の電気分解による水素発生反応(HER)で世界最高レベルの触媒活性を達成した。

 HERはPt原子上の水素イオンの還元と吸着水素原子間の結合で水から水素ガスを生成する反応で、クリーン燃料の水素製造に重要な技術。Ptは最も高活性だが希少で高価なため、使用量削減や高効率化が求められている。

 Pt触媒の高活性化には水素原子と触媒表面との吸着エネルギーの調整が鍵で、Ptを基本元素とした固溶合金ナノ粒子による改善が検討されているが、周期表8~11族の金属元素が主で、周期表3~7族の遷移金属(Mo、Wなど)の報告はほとんどない。

 固溶合金ナノ粒子は前駆体カチオンを還元剤で還元して合成するが、Wは大きな負の酸化還元電位で還元しにくいため、Ptとの酸化還元電位差を考慮し熱分解法で合成した。収差補正走査透過電子顕微鏡のEDS(X線分光法)分析で、Ptに数%のWがドーピングされた直径約5㎚のPt-W固溶合金であることを確認。酸性条件下のHER特性は、㎃/㎠の電流密度に必要な過電圧はPt単体触媒の7割程度でよく、単位Pt質量当たりの水素発生効率は3.6倍であった。

 理論計算から、W原子に隣接するPt原子は負電荷を帯びて水素原子の吸着エネルギーが弱まり、還元された水素原子が水素分子として放出されやすくなり高効率化する、と結論づけた。W増量によるPt活性サイトの増加、周期表3~7族の他の遷移金属との組み合わせ、HER触媒としての材料最適化により、活性が飛躍的に向上する可能性がある。高性能HER触媒の実現と社会実装によるクリーン燃料「水素」の効率的生産で、エネルギー問題や環境問題を解決し、安全でエコロジーな社会実現への貢献が期待される。