日本触媒 CNに向け、グリーンイノベーション推進部を新設

, , ,

2021年8月2日

 日本触媒は30日、サステナブル経営の主要課題の1つである2050年のカーボンニュートラル(CN)達成を目指し、事業創出部門に、「グリーンイノベーション推進部」を8月1日に新設すると発表した。

 これまで事業創出本部にある各組織で行っていた取り組みの集約や責任の明確化により、循環型社会・脱炭素社会の実現に向けた研究開発および事業化推進機能を一層強化していく。同推進部の業務として、基幹製品(アクリル酸、酸化エチレン)のバイオマス原料からの製法開発、CO2回収技術および技術変換の開発、アンモニアの新製法とアンモニア利用技術の開発、その他CNに関する技術の開発、グリーンイノベーション戦略の検討などを担当する。

 同社は今年4月に策定した長期ビジョンに向け「環境対応への変革」を推進。これまでも紙おむつに含まれる高吸水性樹脂のリサイクル技術の開発やリチウムイオン電池電解質「イオネル」(LiFSI)の事業化、グリーン水素製造用のアルカリ水電解セパレーターの開発など循環型社会・脱炭素社会の実現に向けて取り組んできた。

 また、昨年4月にはR&D組織の事業創出本部にサステナブルプロジェクトを設置し、中長期視点で同社基幹製品のアクリル酸、高吸水性樹脂、酸化エチレンのサステナブル化、世界的に期待されているCO2やアンモニアの有効活用なども目指し研究開発を推進している。

 同社は、今回新設するグリーンイノベーション推進部が中核となり、社内の技術や知見の集約に加え、他社との協業も視野にいれた戦略を打ち出し、2050年CN実現に向けて取り組んでいく方針だ。

日本触媒 バイオマス由来SAP、ISCCの認証取得

, , , ,

2021年7月9日

 日本触媒は8日、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、ベルギー子会社NSE社で生産する高吸水性樹脂(SAP)について国際持続可能性カーボン認証機関(ISCC)よりバイオマスの認証を取得したと発表した。

ベルギーNSE社の全景とSAP製造プラント
ベルギーNSE社の全景とSAP製造プラント

 主に紙おむつに使われているSAPは、プロピレンから製造されるアクリル酸を主原料としている。今回、NSE社ではバイオマス由来のプロピレンからアクリル酸を生産し、さらにそのアクリル酸を使ってバイオマスSAPを生産することについて、ISCCより「ISCC PLUS認証(マスバランス方式)」を取得した。今後、顧客の要望に応じてバイオマスSAPを供給する体制を、順次整えていく。なお、バイオマスSAPの品質は石油由来の従来品と同等で、バイオマスSAPを使用することで、製品ライフサイクル全体のCO2排出量削減にも寄与する。

 同社は、バイオマスSAP以外に、生分解性SAP、使用済み紙おむつからSAPを回収しそれを再生したリサイクルSAPなど、環境負荷低減に寄与するサステナブルSAPの研究開発に取り組む。これらの研究開発を推進し、持続可能な社会の実現に貢献していく。

バイオSAP マスバランス方式のイメージ
バイオSAP マスバランス方式のイメージ

 

日本触媒 触媒工業協会の技術賞に、脱硝触媒の仕組みを解明

, , ,

2021年7月1日

 日本触媒はこのほど、「高活性・高耐久性脱硝触媒の開発および高性能発現メカニズムの解明」の研究に対し、触媒工業協会の令和3年度協会表彰「技術賞」を受賞したと発表した。同社が行った実用触媒の研究に関する論文が、触媒研究の分野で権威ある学術誌である「ChemCatChem」などに掲載され、その内容が学術的成果として顕著であることから受賞に至った。

触媒技術賞 触媒上での硫酸アンモニウム塩分解モデル
触媒技術賞 触媒上での硫酸アンモニウム塩分解モデル

 研究の主な対象である「V/TSM触媒」は同社が触媒技術を駆使して開発。発電所や都市ごみ焼却施設排ガスの窒素酸化物(NOx)を無害化する脱硝触媒として、多くの実用実績をもつ。特長として、従来の触媒で困難だった200℃未満の低温でも十分な性能を発揮。また、排ガス中の硫黄酸化物による劣化にも強い耐久性がある。「V/TSM触媒」を使用することで必要触媒量の低減、触媒交換頻度の削減が可能となるだけでなく、排ガスの再加熱に要するエネルギーも削減でき、CO2削減効果も期待される。

 こうした中、同社は、同触媒の高活性と高耐久性発現のメカニズムを解明するため、京都大学の協力の下に解析を続けてきた。その結果、同触媒は、TiO2-SiO2-MoO3固溶体とバナジウム活性種との相互作用により酸化還元能力が向上するため脱硝活性に優れるとともに、一般的な劣化原因物質である硫酸水素アンモニウムに加え、200℃未満の低温で生成するチオ硫酸アンモニウムを分解する能力にも優れるため、硫黄酸化物による劣化が抑制されることを解明した。

 同社は、引き続き脱硝触媒の改良研究に取り組み、得られた知見を活用しさらなる高活性・高耐久性触媒の開発を目指す。

 

NEDOなど カルボン酸合成技術開発、ギ酸を有効利用

, , , ,

2021年6月29日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などはこのほど、計算・プロセス・計測の三位一体による技術開発スキームを活用し、高効率な触媒を使い、ギ酸とアルケンから様々な化学品の基幹原料となるカルボン酸を合成する技術を開発したと発表した。

 NEDOは超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクトに取り組み、革新的な機能性材料の創製・開発の加速化を目指している。今回、産業技術総合研究所(産総研)、先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT)、日本触媒と共同で、安全で環境に優しいカルボン酸の合成技術を開発した。

 カルボン酸は、ポリエステル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、高吸水性樹脂などの高分子材料、医薬品、農薬などの有用化学品の基幹原料となるため工業的な応用も期待されている。しかし、これまでに報告されている例では、高圧条件や有毒で爆発性の高い一酸化炭素(CO)を使用することや、触媒以外にヨウ化メチル(CH3I)など環境負荷の高い複数の添加剤を大量に使用することが問題となっていた。

 今回開発した技術は、従来のような高圧条件を必要とせず、有毒で爆発性の高いCOガスや環境負荷の大きい添加剤を使用しない。さらに、ギ酸はCO2と水素から高効率に合成できるので、CO2を利用したクリーンな原料とみなすこともできる。この技術が実用化されれば、CO2を炭素資源として利用するカーボンリサイクル社会実現への貢献が期待できる。

 今後、触媒系の反応効率をさらに向上させるために、ロボティクスを活用したハイスループット実験により触媒のさらなる改良を迅速かつ効率的に実施し、最終的には化学品の連続生産技術であるフロー合成に使用できる固定化触媒の高速開発を目指す。

 なお日本触媒は、新化学技術推進協会(JACI)がオンラインで開催する「第10回JACI/GSCシンポジウム」(6月28~29日)で、研究成果の詳細を発表する予定。

 

日本触媒 三次元細胞培養容器で膝関節症の臨床研究を開始

, , , ,

2021年6月10日

 日本触媒は9日、三次元細胞培養容器「ミコセル」で作製した脂肪由来幹細胞凝集塊の変形性膝関節症に対する臨床研究について、共同研究先のそばじまクリニック(大阪府東大阪市)で二例の被験者への投与が行われたと発表した。

「ミコセル」を用いた変形性膝関節症に対する臨床研究

「ミコセル」は、日本触媒が独自技術により開発した三次元細胞培養容器で、粒子径がそろい生体内での状態に近い細胞凝集塊を多量に作製できるのが特長。両者は、「ミコセル」によるヒト脂肪由来幹細胞凝集塊の変形性膝関節症に対する安全性、および有効性のデータ取得を目的とした臨床研究を実現するため共同研究を今年2月から実施してきた。

 今回の臨床研究では、患者自身の脂肪由来幹細胞を「ミコセル」で細胞凝集塊とし、これを膝関節内に注射で投与する。計5人の患者へ投与して来年3月までに細胞凝集塊の安全性を確認する計画だ。なお、臨床研究は、そばじまクリニックが「第2種再生医療等計画」を再生医療等委員会へ申請、昨年6月に承認され12月に近畿厚生局に受理された。両者は臨床研究を通して、細胞凝集塊を使った治療の実用化と再生医療のさらなる発展に向けて貢献していく。

日本触媒 有機ELの省電力化などに貢献、電子注入材を開発

, , ,

2021年5月19日

 日本触媒はこのほど、NHKと共同で有機ELの低消費電力化・長寿命化・低コスト化に寄与できる新しい電子注入材料を開発したと発表した。これまで有機ELでは、電極金属から有機材料への電子の供給をスムーズに行うことを目的にアルカリ金属化合物を用いてきたが、これらは有機材料との反応性が高いため有機EL素子の劣化の要因とされてきた。

 これらの課題に対し両社は、電極金属と有機材料との間に大きな分極を生じさせることで、有機ELの劣化要因となるアルカリ金属化合物を用いることなく効率的に電子を注入できる技術開発を推進。今回、この分極型電子注入技術の開発で得られた知見を活用して、より効率的に電子注入を行える電子注入材料を開発した。

 この新しい材料は、フッ化リチウムやリチウム―キノリノール錯体のようなアルカリ金属からなる一般的な電子注入材料に対して同等以上の特性を示し、有機ELの低消費電力化とそれによる長寿命化への寄与が期待される。さらに同開発品を用いることで、これまで困難とされていた陰極から発光層への直接電子注入を容易にできることも見出だした。

 一般に有機ELでは、陰極から供給された電子を発光層に届けるために電子輸送材料が必要とされてきたが、これが不要になることで有機EL構造の簡素化が可能となり、有機ELを構成する材料の削減や成膜プロセス短縮による低コスト化が期待できる。

通常の有機ELの構成
開発品を用いた有機EL構成例

日本触媒の3月期 海外子会社の減損が響き営業損失に

,

2021年5月12日

 日本触媒は11日、2021年3月期の連結業績(IFRS)を発表した。売上収益は前年比10%減の2732億円、営業損失159億円(前年比291億円減)、純損失109億円(同220億円減)となった。

 新型コロナ影響による世界景気の減速などを受けて、原料価格や製品海外市況の下落に伴う販売価格低下、販売数量減少で減収となり、また生産・販売数量の減少やスプレッドの縮小に加え、連結子会社NSEやシラスの減損、三洋化成工業との経営統合中止に伴う関連費用の計上などで大幅減益となった。

 セグメント別に見ると、基礎化学品事業は減収減益。アクリル酸系は国産ナフサ価格の下落に伴う原料価格の下落などで販売価格が低下し大きく減益となり、酸化エチレン系はほぼ前年並みだった。スプレッドが縮小し加工費・販管費が増加した。

 機能性化学品事業は減収・営業損失。高吸水性樹脂や電子情報材料などで減益となった。販売数量の減少やスプレッドの縮小に加え、NSEやシラスの減損を計上した。

 環境・触媒事業は減収減益。プロセス・排ガス処理・脱硝用触媒や、リチウム電池材料で減益となった。

 なお、2022年3月期の通期業績予想は、売上収益10%増の3000億円、営業利益130億円(289億円増)、純利益100億円(209億円増)を見込む。売上収益は、原料価格の上昇による販売価格の上昇と、機能性化学品を中心とした販売数量増加を見込み増収。利益面では、前年度に計上した減損や経営統合関連費用がなくなることに加え、販売数量の増加や、在庫評価差額などの加工費の減少などにより増益となる見通し。

 

日本触媒 長期ビジョンを策定、3つの変革に注力

, , ,

2021年4月28日

ソリューションズ事業を拡大、売上5000億円目標

 日本触媒は26日、長期ビジョン「TechnoAmenity for the future」を策定したと発表した。同日にオンライン記者会見を開催し、

五嶋祐治朗社長
五嶋祐治朗社長

 五嶋祐治朗社長は「この10年、新規事業を創出し既存の主力製品に頼るビジネスモデルの脱却を進めてきた。新規事業の芽は出てきてはいるが、ビジネスモデルを変えるまでには至っていない」とし、

コンテンツの残りを閲覧するにはログインが必要です。 お願い . あなたは会員ですか ? 会員について

日本触媒 業績予想を修正、減損損失で利益が下振れ

, ,

2021年4月27日

 日本触媒は26日、2021年3月期の通期連結業績予想を修正すると発表した。売上収益は2730億円(前回予想比130億円増)、営業損失160億円(同170億円減)、純損失110億円(同120億円減)となっている。

 売上収益は、販売価格が想定よりも高かったことやアクリル酸およびアクリル酸エステルの海外市況が高騰したこと、販売数量も計画を上回ったことなどにより増収となる見込み。一方、利益については、販売数量の増加や海外市況の高騰によるスプレッドの拡大、販管費の削減などがあったものの、海外の連結子会社二社にて減損損失約190億円を計上する見込みとなり、営業利益、純利益とも赤字になる見通し。

日本触媒 抗ウイルス効果の化粧品素材、コロナ不活化を確認

, , , ,

2021年4月26日

 日本触媒は23日、化粧品素材として開発した機能性ポリマーに新型コロナウイルスの不活化効果があることを確認したと発表した。この機能性ポリマーを配合した化粧品は、肌や毛髪を潤すとともに、菌やウイルスによるダメージから守ることが期待される。

 同社が開発した機能性ポリマーは親水性モノマーと疎水性モノマーで構成され、水分保持機能と被膜形成機能を両立した新しいポリマー。これまでに細菌への抗菌作用やエンベロープ(膜状の構造)ウイルス類であるインフルエンザウイルスに対する不活化効果を示すことを確認していた。

 同社では、抗菌・抗ウイルス機能をさらに検証するため、新型コロナ感染症を引き起こすSARSコロナウイルス2に対する効能評価を実施。今回の評価では、ポリマー濃度0.1%の試験条件下で、ウイルスの不活化効果は処理時間60分で約99%、120分で約99.9%であることが判明。ポリマー濃度0.1%、60分以上の接触により十分な効果が発揮される。

 同社は、今後も詳細データの取得を行い、SARSコロナウイルス2に対するポリマー濃度の影響なども明らかにしていく。なお、今回の成果の一部は「CITE JAPAN 2021」(第10回化粧品産業技術展)で発表される予定。