ADEKAは16日、東京工業大学物質理工学院応用化学系の 大塚英幸教授と共同で、プラスチックに自己修復性を付与できる架橋剤を開発したと発表した。なお同件は、高分子学会広報委員会パブリシティ賞を受賞、高分子学会が主催する「第29回ポリマー材料フォーラム」(今月26~27日ウェブ開催)での発表を予定している。
プラスチックといった高分子材料は、暮らしのあらゆる場面で使用されているが、使い捨てプラスチックごみによる海洋汚染が深刻な社会問題となり、生分解性プラスチックなど、環境にやさしい処理技術が発達してきた。一方で、インフラやクルマ、住居などに使用されるプラスチックは、寿命を延ばすことで環境負荷を低減する取り組みが求められている。
こうした中、同社が開発した架橋剤は、簡便にプラスチックに「自己修復性」を付与でき、プラスチックの傷の修復や切断の復元を可能にする。この自己修復性は、「プラスチックの長寿命化」のキーマテリアルになり得る。例えば、同架橋剤を使ったプラスチックのコーティングは、傷がついても加熱により消失。さらに同架橋剤を使ったプラスチックを切断しても、切断面を張り合わせて熱を加えるだけで、再び接着される。
これらは、「BiTEMPS骨格」という特殊構造の中にある「動的共有結合」が熱で解離/結合することで、傷ついた分子が組み替わり修復されるメカニズムによるもの。同架橋剤をプラスチック材料の一部として使用することで、容易にプラスチックに自己修復性を付与できることが判明した。
ADEKAは、この架橋剤のあらゆる用途探索と開発を進め、プラスチックの長寿命化、さらには、持続可能な社会に貢献していく考えだ。