新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、2050年カーボンニュートラル実現を目指し、脱炭素化の実現に必要不可欠な二次エネルギーとして期待される水素に関する11テーマの実証研究事業に着手すると発表した。同事業は総額2兆円のグリーンイノベーション基金事業の一環で実施するものであり、今回が第1号案件となる。
同事業を通じて商用水素サプライチェーンの構築を見通す技術の確立を目指すほか、余剰な再生可能エネルギーの電力を水素に変え、熱需要の脱炭素化や基礎化学品の製造などで活用する「Power to X」の実現を目指すとともに、水素需給創出による好循環を通じた自立的な水素の普及拡大・社会実装を促す。
大規模水素サプライチェーンの構築プロジェクトでは、液化水素とメチルシクロヘキサン(MCH)による大規模水素サプライチェーンの実証研究や液化水素関連機器の評価基盤の整備、直接MCH電解合成などの革新的技術開発を通して、水素供給コストを2030年に30円/N㎥、2050年に20円/N㎥以下まで低減させるための技術確立を目指す。また、供給側の取り組みと同時に水素ガスタービン発電技術を実機により実証することで、大規模需要を創出する水素ガスタービン発電技術の実現に向け技術確立を支援する。
一方、再エネ等由来の電力を活用した水電解による水素製造プロジェクトでは、国内水素製造基盤の確立や、先行する海外市場獲得を目指すべく、アルカリ型およびPEM型水電解装置の大型化やモジュール化、優れた要素技術の実装、水電解装置の性能評価技術の確立といった技術開発などを支援し、水電解装置コストの一層の削減(現在の最大6分の1)を目指す。
また、水電解装置の開発と併せて、ボイラーなどの熱関連機器や基礎化学品の製造プロセスと組み合わせ、再エネ電源などを活用した非電力部門の脱炭素化に関するシステム全体を最適化する実証研究を行う。