旭化成は28日、「ナイロン原料用シクロヘキセン製造技術の開発」の業績が評価され、永原肇顧問が、令和2年春の「紫綬褒章」を受章することが決定したと発表した。紫綬褒章は「学術芸術上の発明改良創作に関し事績著明なる者」に対して授与される。
永原顧問が開発したナイロン原料用シクロヘキセンの製造方法は、従来法に対して、省資源、省エネルギー、廃棄物ゼロを実現し、より安全でCO2排出量約30%削減をもたらすプロセス。昨今、環境・エネルギーの視点から自動車軽量化ニーズなどによってナイロンの世界市場は拡大しているが、同製造プロセスは環境負荷軽減に大きく寄与し、今期の受賞はその業績が評価された。
ナイロンの中間原料はシクロヘキサノールとシクロヘキサノンの混合物。この中間原料の従来の製造方法であるシクロヘキサンの空気酸化法は、当時は、「原料のうち約20%が要処理廃棄物となる」「爆発に対する安全上の配慮が必要である」などの問題点があり、化学工業界の懸案の1つだった。
永原顧問は、これらの問題を克服するため、シクロヘキサノールの前駆体となるシクロヘキセンを得るために、ベンゼンの部分水素化という熱力学的に極めて困難な反応に取り組んだ。亜鉛化合物を助触媒とする新規なルテニウム粒子触媒を見出だすとともに、気相―油相―水相―固体の4相からなる特殊な反応場を用い、触媒・原料・生成物などの溶解・拡散・抽出を制御する技術を確立することで、この反応を成功に導き、工業化までを実現した。
旭化成は、今後も自動車軽量化ニーズなどによってナイロンの世界市場が拡大している状況下で、ナイロン樹脂事業と繊維事業の拡大に貢献していく考えだ。