産総研 PETボトルのリサイクル、常温原料化法を開発

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2021年11月25日

 産業技術総合研究所はこのほど、PETボトルなどに使用され廃棄されたPET樹脂を、従来よりも大幅に低い温度で分解し、原料であるテレフタル酸ジメチル(DMT)を高収率かつ高純度で回収する触媒技術を開発したと発表した。

 同技術は、炭酸ジメチルを使用した新しいアルカリ分解法によって、常温・短時間で効率よくPET樹脂の分解が進行し、原料であるDMTを90%以上の収率で得ることができる。200℃以上の高温処理が課題となる現行法から大幅に低温化できるため、PETボトルの「ボトルtoボトル」リサイクルの低コスト化が期待される。

 使用済みPET樹脂のマテリアルリサイクル(MR)は、選別後に樹脂のまま溶融・再成形する手法であるが、不純物の影響でリサイクル前の品質に戻すことが困難となる。一方、ケミカルリサイクル(CR)は、PET樹脂を一度低分子化合物へと化学的に分解することで、原理的に元のPET製品と同じ品質で製造することができる。しかし、この方法は分解処理のために高い温度が必要であり、高コストなプロセスであることが大きな課題だった。

 こうした中、産総研触媒化学融合研究センターは、資源循環型社会の推進に貢献するため、様々な未利用資源を活用するための触媒技術開発を推進。今回、プラスチックごみを効率的にリサイクルするための触媒技術開発に着手した。PET樹脂の効率的なCRとしてエステル交換反応に着目し、副生成物の捕捉により平衡反応をコントロールする独自のアイデアによって、反応温度の大幅な低温化を実現に成功した。

 今後、同リサイクル法の社会実装を目指し、触媒の改良、反応のスケールアップ、種々のPET含有製品への適応可能性を検討する。また、PET樹脂以外のプラスチック材料をリサイクルするための触媒開発についても鋭意検討を進めていく。

東ソー CO2とケイ素からDEC合成、触媒技術を開発

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2020年11月30日

 東ソーと産業技術総合研究所(産総研)は27日、CO2とケイ素化合物(テトラエトキシシラン:TEOS)を原料として、ポリカーボネート(PC)やポリウレタン(PU)の原料となる「ジエチルカーボネート(DEC)」を効率的に合成する触媒技術を共同で開発したと発表した。この触媒反応は水を副生しないため、触媒の長寿命化と、高い反応効率を実現しており、実用化されれば、CO2を炭素資源として再利用するカーボンリサイクル社会への貢献が期待できる。

 CO2を様々な有用製品として活用する「カーボンリサイクル」に向けた技術開発が重要視されている。資源エネルギー庁がまとめた「カーボンリサイクル技術ロードマップ」では、CO2の化学品への利用例として、PUやPCといった「含酸素化合物(酸素原子を含む化合物)」を想定。CO2から含酸素化合物を合成する技術としては、CO2とアルコールを原料とする反応の検討が報告されているが、目的物の生成効率や反応に用いる触媒の寿命に課題があり、実用化に向けて製造プロセスの低コスト化が実現できる技術が求められている。

 こうした中、両者は、産総研がケイ素資源から直接合成する方法を開発したテトラアルコキシシランをCO2と組み合わせ、DECを高効率に合成する技術の開発に取り組んだ。DECは幅広く活用されている有用化学品だが、その製造法はホスゲンを原料としている。これまで、CO2とエタノールを原料にDECを合成する研究開発は広く行われてきたが、この反応では水が副生するため、生成したDECと水が反応して原料に戻ってしまう逆反応が進行。また、反応系中の触媒が加水分解されて活性が失われてしまうなどの要因で、高効率合成が難しいという課題があった。

 今回開発した技術では、水を副生しないテトラアルコキシシランの一種であるTEOSを原料とする方法を考案。さらにこの反応に有効な触媒を見出だして、製造プロセスの低コスト化を実現できる合成方法を開発した。今回の成果は、産総研が取り組む「砂からTEOSを合成する技術」と組み合わせることで、CO2と砂という実質的に無尽蔵ともいえる資源から有用化学品を製造する可能性を拓くもの。

 両者は今後、より低コストで省エネルギーな製造方法の確立を目指し、反応条件や触媒のさらなる改良を行う。またスケールアップの検討など、実用化に向けて必要な技術課題の解決に取り組み、2030年ごろまでの実用化を目指す。