産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と共同で、米ぬかを栄養源にした硫酸還元菌の活性を利用し、重金属を含む鉱山廃水を安定的に浄化する廃水処理装置の運転管理技術を確立した。
日本国内には、稼働を休・停止した鉱山跡地が多く存在し、重金属を含む酸性の鉱山廃水が発生する場合がある。このような場所では、環境への悪影響を防止するために、廃水処理が続けられている。
一般に鉱山廃水は、専用の設備や化学薬品を使って中和処理されるが、近年は、微生物活性を利用した低コスト・低環境負荷の処理技術に注目が集まっている。JOGMECは、農業廃棄物であるもみがらと米ぬかをそれぞれ微生物の担体と栄養源として活用し、硫酸還元菌の働きによって重金属を沈殿除去する装置の開発を行ってきた。しかし、装置内でどのような微生物が働いているかが未解明であり、装置の安定的な維持管理方法が確立できていなかった。
両者は、処理装置に不可欠な微生物の特定と運転条件の最適化に取り組んだ。その結果、ある硫酸還元菌のみが嫌気度の低い環境に対して例外的に強く、この菌の活性を維持することが安定な廃水処理に重要であることを解明した。この技術は、低コスト・低環境負荷で重金属を含む廃水を浄化できるため、鉱山廃水だけでなく産業廃水への応用も期待できる。
現在、JOGMECは今回開発した装置を大規模化した実証試験を行っており、その装置内の微生物について、両者は共同で解析を行う予定。また、米ぬか以外の有機物を使った装置の開発も進め、様々な条件の廃水への適用を進めていく考えだ。