豊田社長「サプライチェーンと雇用・人財を守る」
トヨタ自動車が発表した、2021年3月期(2020年度)通期業績予想(IFRS)の中で、売上収益は前年度比20%減の24兆円、営業利益は80%減の5000億円との見通しを明らかにした。大幅な減収減益要因は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う市場の落ち込みによる、グルーバルでの自動車販売台数の減少だ。今年度は前年度実績を195万8000台下回る、700万台を想定する。
12日に行われたオンライン決算説明会Ⅰ部で、近健太執行役員は、新型コロナの影響で先々は見通しづらいとしながらも、「当社は自動車産業のOEMであり、非常に裾野が広い産業だ。なんらかの基準を示すことが必要だと考え、見通しを公表した」と経緯を説明。算出に当たっては「販売は4月を底に、年末から来年にかけて前年並みに戻っていく」(近執行役員)ことを前提条件に、販売台数は4-6月期に前年度比6割程度、7-9月期に8割程度、10-12月期に9割程度までの回復を想定し、その後は徐々に前年並みに推移するとの見通しを示した。
続く決算説明会のⅡ部では、豊田章男社長が登壇し、決算発表を踏まえた上でのコロナショックへの対応をスピーチした。今年度の販売台数は、リーマンショック以上の約20%の減少を想定するものの、「営業利益は5000億円の黒字確保を見込んでいる」(豊田社長)とし、これまで同社が行ってきた企業体質の強化を評価した。
中でも「国内生産300万台体制の死守」を挙げ、どんなに厳しい経営環境下にあっても「日本にはモノづくりが必要であり、グローバル生産をけん引するために競争力を磨く現場が必要だ。その信念の下、まさに『石にかじりついて』守り抜いてきた」と言葉を強めた。その背景には、自社のみを守るのではなく、「そこに連なる膨大なサプライチェーンと、そこで働く人たちの雇用を守り、日本の自動車産業の要素技術と、それを支える技能を持った人財を守り抜くことでもあった」(同)との考えを明かした。
さらに豊田社長は「私たちが『石にかじりついて』守り続けてきたものは、『300万台』という台数ではない。世の中が困った時に必要なものをつくることができる、技術と技能を習得した人財だ」と続けた。
同社ではコロナ感染拡大を受け、米国で3Dプリンタを使った医療用フェイスシールドの生産などを展開し始めた。多くの化学メーカーが自動車産業に参入する今日、業界が連携しコロナショックをどう乗り切るのか、ポストコロナに向けた新たな戦略が期待される。