旭化成は5日、名古屋大学未来材料・システム研究所の研究グループ(天野浩教授ら)と、室温パルス電流注入による271・8㎚という世界で最も短波長のレーザー発振に成功したと発表した。
両者は窒化アルミニウム(AlN)基板を用いた深紫外(UV‐C)半導体レーザーの共同研究を進めている。同研究のUV‐C半導体レーザーは、旭化成のグループ会社であるCrystal IS社が製造するAlN基板を使用した。
Crystal IS社のAlN基板は、二インチでかつ1000個/㎠レベルの低い欠陥密度が特長で、今回のUV‐Cレーザー発振に大きく寄与している。これまでの半導体レーザーは、発振波長336㎚にとどまっており、今回の結果は、世界に先駆けてUV‐C帯への短波長化の道を切り開いた。
UV‐C波長帯の半導体レーザーが実現できれば、ガス分析などセンシングへの応用、局所殺菌、DNAや微粒子などの計測・解析といった、ヘルスケア・医療分野への応用が期待される。今回の成功のキーポイントとして①レーザーの光を閉じ込める層に特別なp型層を用いて抵抗を下げたこと②欠陥の少ないAlN基板を用い光散乱による損失を抑えたこと③旭化成での最先端の薄膜結晶成長技術と名大での卓越したプロセス技術・評価技術を融合させたことが挙げられる。
今後も旭化成と名大は、共同研究をさらに発展させることにより、UV‐C半導体レーザーの室温連続発振と実用化を目指して開発を進めていく。なお、今回の研究成果は、10月30日付の「Applied Physics Express」オンライン版に掲載された。