DIC 天然由来色素の新合成法、米社と共同研究を開始

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2021年7月29日

 DICは28日、食品用着色剤、化粧品用途など天然由来色素の事業拡大を目的として、バイオベンチャー企業のデビュー・バイオテクノロジー社(米国カリフォルニア州)との天然由来色素の新合成法に関する共同研究開発を開始したと発表した。

 近年、食品用着色料や化粧品用途などの分野で、石油由来の合成着色料から安全な天然由来着色料への代替ニーズが急増している。しかし、花や植物といった天然物から抽出される色素などの成分は含有量が少なく、抽出後に廃棄物が大量に発生するといった問題や、多くの土地、水を必要とするといった環境面での課題がある。また使用に当たり、天候不順による供給安定性や色目などの性能が振れるなどの農業特有の問題がある。

 この解決策として、細菌や酵母、藻類などを用いた培養による高効率生産が検討されているが、細胞内の生体反応を用いるため、全ての反応プロセスを最適な条件で行うのが難しく、多くの副生成物が発生するという課題が残る。

 DICと共同研究を行うデビュー社は、生体内で用いられる酵素を細胞から取り出し、最適な条件で反応させることで様々な物質を効率的かつ連続的に製造する「次世代バイオ合成プラットフォーム」を保有。同プラットフォームは生物と同じ酵素を用いるが、細胞を用いない(セルフリー)ため、全ての反応を最適化でき、安定した純度の高い目標物の合成が可能となる。また、従来は含有量が低いために見逃されてきた有効成分を特異的に生産することも期待される。

 研究開発においては、デビュー社の酵素反応に対する高い知見およびプロセスデザインと、DICの顔料やヘルスケア食品などのカラーマテリアル分野で培ったスケールアップ技術、品質管理、製品開発能力を組み合わせることで、従来にないサステナブルで高付加価値な天然由来色素の開発・製品化とグローバル市場での販売を目指す。

DICなど 速硬化炭素繊維強化プリプレグシートを開発

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2021年7月16日

 DIC、セーレン、福井県工業技術センターは15日、世界最速硬化・常温保管を実現した「速硬化炭素繊維強化プリプレグシート」を開発したと発表した。今回、量産プロセスを構築し、セーレンにおいて稼働させた実証機を用いたシートサンプルの提供を7月から開始する。なお、今回のプロジェクトは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の採択テーマ「自動車搭載炭素繊維複合材料用高速硬化プリプレグの実用化開発」(2018年7月~2021年6月)において実施された。

新型炭素繊維強化プリプレグシート
新型炭素繊維強化プリプレグシート

 炭素繊維強化プリプレグシートは、炭素繊維の束を広げて樹脂を含浸させたシート状の中間材料。軽量で強度が高く、低燃費・軽量化のニーズが高まる航空機や宇宙船、自動車向けに用途が広がっており、今後さらに拡大すると見込まれている。一方、一般的にプリプレグシートを含めた炭素繊維複合材料(CFRP)の成形加工は時間を要するため、CFRPのさらなる普及には、成形時間を短縮する技術が求められている。

新型炭素繊維強化プリプレグシート加⼯実証機

 今回の開発では、DICが強みをもつ高分子設計テクノロジーを生かした「高速硬化樹脂(最短30秒以下で硬化するラジカル硬化樹脂)」の設計技術と、福井県工業技術センターが保有する繊維束を高速に薄く広げる「空気開繊技術」、セーレンが保有する樹脂成膜・塗工技術を生かした「高精度含浸技術」を組み合わせることで、最短30秒という世界最速レベルの硬化時間のプリプレグシートを実現。また、一般的なエポキシ系のプリプレグシートは、保管時に冷凍・冷蔵倉庫などが必要となるが、同開発品は常温保管が可能で、シート保管の設備と管理の負担も軽減することができる。

 DICとセーレンは、開発した新型プリプレグシートで、自動車分野をはじめ、幅広い産業への展開を検討している。今後、さらなるCFRPの生産性向上により、その普及を促進し、軽量化による低燃費化、省エネルギー化に貢献していく。

 

DIC 可塑剤を値上げ、原料や包装材料費の高騰に対応

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2021年7月16日

 DICは15日、可塑剤について今月26日出荷分から値上げすると発表した。対象製品と改定幅は、ポリエステル系可塑剤が「25円/kg以上」、エポキシ化大豆油(ESBO)が「30円/kg」、その他エポキシ系可塑剤が「35円/kg以上」、アジピン酸系可塑剤が「22円/kg以上」、トリメリット酸系可塑剤が「23円/kg以上」、特殊可塑剤が「25円/kg以上」となっている。

 原油・ナフサ価格の上昇および需給のひっ迫により可塑剤の主原料である各種酸、植物油、アルコール類の価格が高騰を続けている。さらに、鋼材価格の上昇からドラム・缶の包装材料費も高騰している。同社は、引き続き自助努力による吸収を続けているが、昨今の原料価格および包装材料コストの上昇を吸収することは極めて困難な状況にあることから、今後の事業継続を図るためには値上げが避けられないと判断し、今回の値上げを決定した。

DIC IoT環境無線センサー、防水型の販売を開始

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2021年7月7日

 DICは、温度・湿度・照度のセンシングを行うやわらかい無線センサーに防水機能を付与した防水型「ハッテトッテ」の販売を先月16日から開始した。

やわらか無線センサー「ハッテトッテ」の防⽔型と屋外での使⽤イメージ
やわらか無線センサー「ハッテトッテ」の防⽔型と屋外での使⽤イメージ

 同製品は、これまで屋内向けのIoT環境無線センサーとして、簡単設置・簡単移設、薄く小さく目立たないデザイン、LoRaWANによる長距離無線通信といった特長をもち、既存製品にはない価値を提供している。

 一方、屋外では、工事現場やグラウンドなどで熱中症を予防するための熱中症危険度の測定や、浴室や脱衣所などではヒートショック危険度の測定などの機能がセンサーに求められている。しかし、従来品では設置や移設が難しいこと、テープでの簡便な固定では落下の危険性を伴うこと、筐体が厚く作業の邪魔になること、防水機能が必要などの課題があった。

 こうした中、同社は温湿度の測定機能により、熱中症危険度やヒートショック危険度の算出にも応用できる防水型の「ハッテトッテ」を開発。同製品は、IPX6相当の防水機能をもつため、屋外の雨天時のほか、浴室や脱衣所など水の掛かる場所でも使用できる。加えて、照度センサーも備えているため、日中のみ、浴室使用時のみなど使用するシーンに応じて警告を出す設定も可能。やわらかく軽量であるため、万一落下した場合も危険を低減し、加えて、貼るだけで簡単に設置でき、多くの場所に設置できるため、広範囲の現場で温湿度の測定が可能だ。

 同社グループは中期経営計画の中で、Value Transformation(質的転換による事業体質強化)とNew Pillar Creation(社会の課題・変革に対応した新事業創出)の2つの基軸による事業ポートフォリオ転換を基本戦略に掲げる。新事業創出の柱の1つとしてエレクトロニクス分野の強化に注力しており、今後も社会変革に対応した製品開発を進めていく。

DIC BASFのグローバル顔料事業の買収が完了

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2021年7月2日

 DICはこのほど、独BASFがもつ顔料事業「BCE(BASF Colors and Effects)」に関する資産および株式の買収を完了したと発表した。

 DICは2019年にBASFと売買契約を締結。BCEに関する技術、特許などの知的財産、株式買収に含まれない営業権などの資産、同事業を構成する18社の株式取得に向けて、関連する諸手続きを進めてきた。6月30日にすべての手続きが完了したため、両社間でクロージングの合意に至った。

 DICは中期経営計画の中で、「安全・安心」「彩り」「快適」の価値提供を通じて、〝ユニークで社会から信頼されるグローバル企業〟を目指し、「質的転換」による事業体質の強化「バリュー・トランスフォーメーション」と、社会課題や社会変化に対応した新事業の創出「ニュー・ピラー・クリエイション」の2つを基本戦略として推進している。

 DICグループの一員となるBCEは欧州を中心にグローバルに拠点をもち、高級顔料、エフェクト顔料(化粧品向け)および特殊無機顔料では世界有数の会社であり、BCEが保有する技術、製品、生産設備、サプライチェーン、顧客サービスなどの事業ポートフォリオは、DICと重複が少なく製品補完性が高い状況にある。

 今回の買収によって、両社のポートフォリオが相互に補完されることにより、DICはディスプレイ、化粧品、塗料、プラスチック、インキ、スペシャリティ用途などの製品群をさらに拡充し、世界有数の顔料メーカーとしての地位を強化していく。そしてグローバルベースでより幅広い製品とソリューションを顧客に提供する体制を構築することで、顔料事業の質的転換を加速していく。

DIC 共押出多層フィルムを値上げ、コスト上昇に対応

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2021年6月30日

 DICは29日、共押出多層フィルム「DIFAREN(ディファレン)」の全銘柄について、7月21日納入分から値上げすると発表した。改定幅は「一連(500㎡)あたり250円以上(厚み20㎛換算)」。

 同社は、今春にも同製品の値上げを実施していたが、その後も、原油や国産ナフサ価格は高騰を続け、フィルム製品の原材料価格がさらに高騰している。加えて、物流費、副資材費、設備維持費といったコストも上昇している。こうした中、同社は自助努力を続けてきたが、これらの費用の吸収は極めて困難な状況にあることから、今後の安定供給のためには、値上げが避けられないと判断した。

DIC カーボンネットゼロ実現、CO2削減目標を更新

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2021年6月21日

 DICは18日、サステナビリティの観点から定めたCO2排出量の長期削減目標を更新し、新たな目標として「2030年度50%削減」および「2050年度カーボンネットゼロ」の実現を目指すと発表した。

 同社は、環境問題をはじめとするサステナビリティを重要な経営課題と位置づけている。2019年にはTCFD提言への支持を表明し、気候変動をビジネスに影響を及ぼす重要なファクターと捉え情報開示を推進。また、現中期経営計画では、CO2排出量の長期削減目標として2030年度30%削減(2013年度比)を掲げ、CO2削減に取り組んでいる。その後も世界的な脱炭素社会実現の動きが加速しており、今年4月には気候変動イニシアティブ(JCI)が「パリ協定を実現する野心的な2030年目標」メッセージを政府に求めた。

 同社もこうした動きに賛同し、さらに積極的に脱炭素社会の実現に取り組んでいく決意の下、新たな削減目標を設定。実行施策として、①太陽光、風力、バイオマス発電といった再生可能エネルギーを利用し国内グループの消費エネルギー15%を充当、②社会的価値を明確にする物差しとして「サステナビリティ指標」の策定、③インセンティブとしてインターナルカーボンプライシング制度(ICP)を社内に導入、④エフピコとポリスチレンの完全循環型リサイクルの社会実装に向けた協業、といった取り組みを進めている。

 同社は今後も、気候変動を最も重要な社会課題と位置づけ、脱炭素に貢献する製品・サービスの拡大に取り組み、市場や社会に向けたCO2排出削減の貢献に積極的に取り組んでいく。

 

DICグラフィックス バイオマスグラビアインキなどの販売を開始

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2021年6月14日

 DICの子会社であるDICグラフィックスがこのほど、耐アルコール性や耐油性に優れた表刷りバイオマスグラビアインキ「グロッサBM」を開発した。さらに、インキに抗菌性を付与する高機能な抗菌ニスを開発し、両製品の販売を開始した。今後は、日本国内での販売を拡大し2025年には販売数量年間1000tを目指す。

 これまで、パンなどの食品包装フィルムに印刷されたインキがテーブルクロスなどに付着するといった事象があり、バターやマーガリンなどの油類や、アルコール除菌剤などのアルコール成分がインキの付着を促す要因の1つと推定し、印刷インキの耐性を高める研究を進めてきた。さらに、コロナ禍以降の生活様式に対応するため、アルコール耐性が高く、耐熱・耐油性にも優れた抗菌ニスの研究も同時に進め、今回、両製品の開発に成功した。

 印刷インキの耐性を大幅に向上させた「グロッサBM」シリーズは、機能面だけでなく環境面に配慮したサステナブルな素材として植物由来の再生可能原料を含有。日本有機資源協会が認定する「バイオマスマーク10%」を取得している。そのため、表刷りバイオマスグラビアインキ「グロッサBM」と高機能な抗菌ニスを組み合わせることで、顧客に「安全・安心」なパッケージ材料の提供が可能になる。

DIC 配線形成用シードフィルムが日化協技術特別賞に

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2021年6月8日

 DICは7日、太陽ホールディングスの子会社である太陽インキ製造と共同開発した「高周波対応配線形成用新シードフィルム」が、第53回日化協技術特別賞を受賞したと発表した。

日化協 技術特別賞を受賞した⾼周波対応配線形成⽤新シードフィルム
日化協 技術特別賞を受賞した⾼周波対応配線形成⽤新シードフィルム

 5Gの普及に伴い、使用周波数帯域であるSub6やミリ波帯で高周波信号をロスなく伝送する銅配線技術が重要になる。しかし、高周波帯域では電流が銅配線の表層にしか流れず、表層の形状が平滑でなければ伝送損失が増大するため、配線の4辺を平滑にする銅配線形成技術が求められていた。

 こうした中、DICは、同社の金属ナノ粒子材料をフレキシブルプリント配線板用に展開し、銅配線形成時の銅めっきのシード層として使うフィルム材料を開発。同フィルム材料により、基材フィルムと銅配線の界面を極めて平滑な状態で密着させることができる。

⾼周波対応配線形成⽤新シードフィルムによる銅配線形成例. png
⾼周波対応配線形成⽤新シードフィルムによる銅配線形成例

 また、同フィルム材料は、銅とは異なる金属をシード層に使用するため、シード層のみをエッチングすることが可能となる。より精度の高い銅配線を形成する方法として従来用いられている銅シード・モディファイドセミアディティブプロセス(MSAP)に比べ、銅配線が痩せずに配線表面や側面が平滑なファインパターンを得られる。こうした特長が、次世代通信規格5G通信の高周波伝送損失を低減できる技術として高く評価され、今回の受賞に至った。

 DICは「当社グループは、2017年から太陽ホールディングスと資本業務提携を行っており、今回の受賞がその具体的な成果として評価されたことを大変喜ばしく思う。今後もさらに資本業務提携によるシナジーを生かして成長の基軸となる事業を構築し、将来にわたる発展に繋げていく」と述べている。

DIC ハイブリッド型無機系抗ウイルス・抗菌剤を開発

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2021年6月7日

 DICはこのほど、ハイブリッド型の無機系抗ウイルス・抗菌剤「ウィルミッシュ」を開発し販売を開始したと発表した。同製品は、高い抗ウイルス・抗菌性を発揮する金属化合物と特殊な光触媒から構成されるハイブリッド型。同社は今後、住宅内装材や繊維、産業資材などの広範な用途での展開に向けて製品ラインアップを拡充し、日本、中国、東南アジア地域への販売を視野に入れ、2025年までに売上高15億円を目指す方針だ。

ハイブリッド型抗ウイルス・抗菌剤の⽤途展開
ハイブリッド型抗ウイルス・抗菌剤の⽤途展開

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く状況下では、消費者の衛生面への関心が高まり、医療施設や公共施設だけでなく、日常生活のあらゆる場面で抗ウイルス・抗菌製品の使用を求める声が多くなっている。抗ウイルス・抗菌剤として有機系製品があるが、皮膚刺激性などの安全性や耐久性の点で近年、無機系製品が着目されている。しかしながら、抗ウイルス性や耐久性、安全性の全ての点で高い機能をもつ製品は多くない。

 今回、同社が開発した「ウィルミッシュ」は、一般的な細菌やインフルエンザ型ウイルスはもちろん、従来の製品では効き難いとされるノロ型ウイルスにも有効。光のない暗所では、金属化合物の作用で高い抗ウイルス性を発現し、光のある明所では、屋内の弱い光でも反応する(可視光応答型)光触媒の作用でさらに高い抗ウイルス性を発揮するとともに、皮脂などの特定の有機物汚れを目立ちにくくするセルフクリーニング機能が期待できる。加えて、耐熱性や耐水性などの耐久試験後も、高い抗ウイルス性を確認しており、安全性試験でも良好なデータが得られている。

 同社は今後の幅広い用途展開を視野に、多方面の製品への応用技術についても特許を出願中。現在、住宅内装材や繊維、産業資材などの広範な分野で同製品の実証試験が進んでおり、すでに内装材分野で一部採用されている。

 今後もDICグループ内に培ってきた多種多様な技術を基盤に、性能向上とアプリケーション開発を進め、人々の健康で安心・安全な暮らしの実現と生活空間の快適化に貢献していく。