DICはこのほど、LIGHTz社(茨城県つくば市)と共同で、熟練者の知見を言語化し、新たな不具合発生時に現場オペレーターの要因解決につながる事例を迅速に引き出すことが可能な、教師型AIシステム「Prism(プリズム)」を開発し、運用を開始したと発表した。
国内の生産現場では、少子高齢化による労働人口の減少や高齢化を背景とした熟練者の技術伝承が共通課題。DICでも生産現場での技術伝承を課題と認識し、その解決策として生産部門におけるDXの活用を検討してきた。
2019年にプロジェクトを発足し、すでに顔料の生産現場で設備保全の不具合情報をデータベース化しAI導入の下地があった鹿島工場をモデル工場に位置づけた。
同社は、技術伝承という観点から、単に過去のデータから答えだけを導き出すのではなく、熟練者の複雑な思考を言語化することで「言葉と言葉のつながり」を可視化し、「気づきや閃き」を与えることに長けた〝教師型AIツール〟であるLIGHTz社の「オルジニアス」の導入を決定。同AIツールと鹿島工場の膨大なデータを連携させるため、フロントエンドシステムとして「プリズム」を開発した。
特長として、①既存の設備保全データをベテラン社員の思考の見える化(言語化)に変換することにより、保全ノウハウをより自然な形で次世代に技術伝承可能、②ノウハウを汎知化することで常に現場オペレーターに学ぶ意識を醸成、③解を導き出すプロセスから新たな気づきを促す「ホワイトボックス型AI」、などが挙げられ、中長期的な視点で同社の生産現場での設備保全に係る課題解決に貢献することが期待される。
同社は、同システムを今年6月から鹿島工場の顔料生産現場に導入し、まずはシステム定着とさらなる活用方法の検討を進めている。実績と成果を積み上げた後には、同社の他工場や事業所への水平展開も予定している。