日本化学工業協会(日化協)はこのほど、日本毒性学会内に設立した日化協LRI賞の第5回目の受賞者に、広島大学大学院医歯薬保健学研究科の古武弥一郎教授を決定した。テーマは「化学物質神経毒性の分子基盤解明と毒性評価指標の開発」。
主な受賞理由は2点。1点目は、有機スズなどの神経毒性を有する化学物質が、生体内に存在するグルタミン酸受容体(GluR2)のタンパク質レベルを減少させることを見出すなど、化学物質の神経毒性メカニズムの解明に貢献したこと。
2点目は、化学物質の神経毒性評価で、GluR2の発現低下が評価指標として有用であることを示したこと。この評価指標を用いることでIn vitro(試験管内)での鋭敏な神経毒性の予測評価手法として実用化が期待できる。
LRIとは、国際化学工業協会協議会(ICCA)に加盟している欧州化学工業連盟、米国化学工業協会、日化協の3つの団体によって1999年から運営されているグローバルプログラム。化学物質の安全性を向上させ、不確実性を低減させることを目的に「化学物質が人の健康や環境に与える影響」に関する研究を、長期的に支援する自主活動である。
日化協では2000年からLRIを通じて、年間最大1億円の研究支援を始め、2015年にはLRIの認知拡大と理解促進のほか、優れた若手の研究者、世界をリードするような新しい研究分野を発掘することを目指し、日本毒性学会内に日化協LRI賞を設立した。
なお、授賞式は6月26~28日にアスティとくしま(徳島県立産業観光交流センター)で開催される、第46回日本毒性学会学術年会で行われる。