UBEは30日、CO2分離膜を中心とする需要の急増に対応するため、宇部ケミカル工場内のガス分離膜用ポリイミド中空糸製造設備と堺工場内のガス分離膜モジュール製造設備を増設すると発表した。いずれも2025年度上期の稼働を予定し、生産能力は現行比で約1.8倍に拡大する。
同社のガス分離膜事業は、
2023年1月31日
2023年1月27日
中国経済の混乱が要因、春節休暇明けの動向注視
UBEは、ナイロン原料であるカプロラクタム(CPL)について、1月(上旬決め)の韓国・台湾大手向け契約価格を前月比100ドル安の1550ドルで決着した。12月は原料ベンゼン見合いで100ドル安となっていたが、1月はゼロコロナ政策を緩和した中国の混乱が重荷となり、2ヵ月連続で大幅安となっている。
CPLの契約価格は、中国から輸出されるナイロンチップの動向に左右される。昨年2月まで中国からの輸出量は月2万tペースだったが、行動制限による内需の低迷で増加基調となり、6月には4万1000tを記録。その後、3万t台まで落ちたものの、再び10月3万8000t、11月3万9000tと高水準で推移している。安価な中国チップがアジア市場に定着したことで、台湾チップの価格の下押し要因となっており、UBEの契約交渉も夏場以降から値下げ圧力が強まっている。
こうした中、中国政府は12月にゼロコロナ政策を緩和。これが感染者の急増につながり、経済活動の混乱に拍車をかけた。中国のCPLスポット市況が急落したため、SINOPECは、12月(下旬決め)の契約価格を、75ドル安(900人民元安)の1360ドル(1万1700人民元)で決着している。こうした最悪期の交渉となったことで、UBEも2ヵ月連続での百ドル安を受け入れざるを得なかったようだ。
ベンゼンとのスプレッドも大幅に悪化した。1月のベンゼンACPが高騰したため、スプレッドは155ドル縮小の685ドルとなり、2020年9月以来、2年4ヵ月ぶりに700ドル台を割り込んでいる。副生される硫安の市況回復が遅れていることもあり、UBEにとって事業採算が大幅に悪化している状況だ。
一方、感染拡大がひと段落したことで、年明けから中国経済回復への期待が高まっている。CPLのスポット市況も反転し、春節休暇(1月21~27日)直前まで上昇基調を継続。これを受けて、SINOPECは1月の公示価格を前月から580人民元高の1万2280人民元で発表。人民元高を踏まえるとドルベースでは10月の水準を上回っており、市場の空気が一変したと言える。
中国のナイロンチェーン稼働率(1月3週目までの平均)を見ると、CPLは79%稼働と前月比7ポイントも上昇した。定修明けの複数メーカーが稼働を再開したことが背景にある。チップは汎用グレードが持ち直したことで66%と2ポイント上昇。ヤーン(糸)は、春節休暇を控え紡糸工場が早めに工場を止める傾向にあるため、50%と10ポイント以上も低下した。CPLが高稼働でも市況が上昇していることから、春節休暇明けの需要増を見据えた需要家の買いが入っているようだ。
UBEは2月の契約について、ベンゼン市況の上昇を吸収できる200ドル高以上の値上げで決着したい意向。春節休暇明けに中国市況が強含めば、契約交渉がスムーズに進むと見られる。ただ、欧米の景気減速が懸念材料。アジア地域からナイロン製品の輸出が頭打ちになれば、在庫が積み上がる可能性もあり、この先の市場動向が注目される。
なお、UBEは3工場で稼働調整に取り組む。宇部工場は硫安の輸出を抑えるため90%程度に稼働を落としている。海外工場についても事業環境の改善が見られないことから、タイ工場は80%稼働、スペイン工場は70%の低稼働が続いている。
2023年1月19日
2023年1月17日
2022年12月28日
ベンゼン安が影響、中国市況の低迷も下押し要因
UBEは、ナイロン原料であるカプロラクタム(CPL)について、12月(上旬決め)の韓国・台湾大手向け契約価格を前月比100ドル安の1650ドルで決着した。原料であるベンゼン市況が大きく軟化しており、CPLも連れ安となっている。スプレッドについては、ベンゼンの下げ幅をカバーできず、15ドル縮小の840ドルに悪化した。UBEにとっては、需要悪化で販売数量が伸びていないことや、ユーティリティコストや物流費などが上昇していることもあり、800ドル台の水準では収益的に厳しいと言える。
契約価格が弱含んでいる要因として、安価な中国チップがアジア市場に定着したことが挙げられる。中国ではゼロコロナ政策により景気が悪化。ナイロン樹脂やナイロン糸の需要が低迷していることもあり、CPL市況がアジア価格よりも低水準となっている。それを安価なチップとして輸出しているため、台湾チップのシェアが奪われており、価格交渉の重荷になっている状況だ。
中国市況を見ると、SINOPECは、11月(下旬決め)のCPL契約価格を、前月比24ドル安(200人民元安)の1435ドル(1万2600人民元)で決着。これで、4ヵ月連続で1万3000人民元台を下回った。さらに12月の公示価格も、値差が広がったスポット価格に合わせて、1万1700人民元と大幅に引き下げたようだ。
中国のナイロンチェーンの稼働率(12月3週目までの平均)を見ると、CPLは72%と前月から3ポイント上昇した。減産や停止の動きが見られるものの、長期の稼働調整は雇用問題などで地方政府に睨まれるという事情があり、稼働率70%割れになると、無理に稼働させるケースがあるという。ただ、ナイロンチップは64%(高速紡糸用70%弱、汎用グレード60%)の同5ポイント低下、ヤーン(糸)も64%の同9ポイント低下となっており、川下製品は一段と需要が低迷。CPLだけが70%稼働を維持していることで、需給バランスが崩れており、ナイロンチェーン全体の市況が改善されない要因となっている。
UBEは来年1月の契約について、ベンゼン市況の軟化が一服してきたことから、ステイでの決着を目指すという。ただ、中国ではゼロコロナ政策の緩和により感染者が急増。節目である旧正月明けに好転するとの期待がしぼみつつあり、価格交渉の難航も想定される。
こうした状況を踏まえ、台湾大手CPLメーカーであるCPDCは、春の定修時から1工場の停止を継続。さらに、もう1工場も11月末に稼働を停止し、在庫販売に切り替えたもよう。仮に、CPDCの稼働調整が長引けば需給が締まってくることも想定され、UBEの交渉にプラスに働く可能性もあると見られる。
なお、UBEの3工場については、宇部工場は秋の定修が明けたことから、フル稼働で在庫を積み増している。スペイン工場は、欧州の経済環境を反映し70%稼働を継続。ただ、欧州では経済の混乱から稼働を停止する工場も多く、こうした顧客を集めることで売り先を補確保しているという。タイは、定修を延長して稼働を抑えていたが、11月末に再開した。ただCPL、副生品の硫安とも需要が戻っておらず、当面は80%程度の稼働を計画している。
2022年12月23日
2022年12月2日
2022年12月2日
2022年11月30日
2022年11月7日