JSRは13日、液晶ディスプレイ(LCD)の基幹材料である配向膜で、LCD製造での低温焼成を可能にするグレードを新規に開発し、販売を開始したと発表した。
従来のLCD用配向膜は、ポリイミドやその前駆体が主な原料ポリマーだが、同配向膜の生産にはN‐メチルピロリドン(NMP)といった、高沸点・高極性の溶媒が必要だ。
また、LCDを長時間駆動させる高い信頼性を実現するために、配向膜には化学的に安定した構造が求められ、顧客の生産ラインでは、200℃以上の高温焼成が必要となる。
今回開発した原料は、化学的に安定した構造である有機多環化合物で構成されているため、同原料を使用した新規配向膜でのLCD生産プロセスで、低温焼成が可能になる。
さらに、NMPではなく一般的な有機溶剤を用いても、溶解度が高く、良好な基板塗布性を実現することができる。
同配向膜は、すでに一部顧客製造ラインでLCD生産適用可能との評価を得ており、150~200℃の低焼成温度で実用化できることが実証されたことで、今後、販売を拡大していく。
次世代技術となる8K放送の普及に向けては、高精細・高輝度を実現する新たなLCDが必要で、今回開発した新規配向膜は、コスト・輝度・精細度で高性能なLCDの実現に寄与する。
また、今回開発した原料ポリマーは、配向膜にとどまらず、層間絶縁膜やカラーフィルター用材料でも低温焼成実現に寄与するため、新規材料のプラットフォーム原料となる。
今後、さまざまな新規材料を取り揃えて、それらを組み合わせることにより、LCDの高性能化を提案していくことで、LCD材料のさらなる高付加価値化も進めていく。
なお、今回の新規配向膜と原料ポリマー開発では、同社が積極的に推進するデジタリゼーションに対応したデータ解析やシミュレーションを活用することにより、従来、顧客の生産ラインでの試作を繰り返さなければ発見できなかった課題を未然に解決することにより、研究開発のスピードアップにもつなげている。
低温焼成を実現することで、LCDの製造工程で、電力消費が減少し、環境負荷低減に貢献することも期待される。