富士フイルム 米社とiPS細胞によるがん免疫治療薬の開発を開始

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2019年7月4日

 富士フイルムはこのほど、がん免疫療法に他家iPS細胞を用いた次世代がん免疫治療薬の開発を加速させるため、iPS細胞の開発・製造のリーディングカンパニーである米国子会社フジフイルム・セルラー・ダイナミクス(FCDI)と、医療分野における米国有力ベンチャーキャピタルのVersant社が、新会社Century社を設立し、他家iPS細胞を用いた次世代がん免疫治療薬の開発を開始した。なお、同開発には、大手製薬企業バイエル社も参画し開発費用を拠出している。

 がん免疫療法は、生体の持つ免疫機能を高めてがん細胞を排除する治療法で、延命効果や症状の緩和が期待できることから、がん免疫治療薬の研究開発が活発化している。

 なかでも、現在注目されている、CAR‐T胞を用いたがん免疫治療薬は、免疫細胞であるT細胞にCAR遺伝子を導入することで、がんに対する攻撃性を高めた医薬品。すでに米国では、自家CAR‐T細胞を用いた治療薬2製品が承認され、非常に高い治療効果が確認されている。

 しかし、自家CAR‐T細胞を用いた治療薬は、患者自身のT細胞を採取・培養して作製するため、患者ごとに細胞の品質にバラつきが発生、また製造コストが非常に高い、といった課題がある。

 FCDIは、他家iPS細胞由来のCAR‐T細胞を用いたがん免疫治療薬の研究開発を推進。同治療薬では、他家iPS細胞を大量培養し、分化・誘導して作製したT細胞を活用するため、均一な品質と製造コストの大幅な低減が期待できる。

 今回、FCDIは、同治療薬の開発を加速させ早期事業化を図るために、有望な技術を持つベンチャー企業に必要な人材や技術などを獲得・投入し数多くの事業化を支援してきたVersant社、数々の新薬を創出してきた経験・実績のあるバイエル社と協業。

 今後、富士フイルムは、Century社にて、他家iPS細胞由来のCAR‐T細胞などを用いたがん免疫治療薬の早期創出・事業化を目指していく。