昭和電工はこのほど、FRONTEOが開発した人工知能(AI)「KIBIT」を用い、生産設備など投資の社内審査で効率的に知見を活用する検索システムを導入し、今年1月末から運用を開始した。
生産設備などの新設、維持・更新投資を判断する際には、過去に行った投資判断の財務的投資効果や安全・安定稼働など多くの視点で審査を行う。
生産技術とエンジニアリング上の妥当性の審査には、過去約20年間の累計2000件を超える審査で得られたノウハウを活用しているが、これまでは複数の文書データベース・文書ファイルからキーワード検索していたため絞り込みが容易ではなく、また、類似性の判断では審査員の経験に依存するところも大きく、蓄積されたデータを十分に活用できていなかった。
そこで、過去の審査で蓄積された設備の安全・安定稼働に関わる視点をより有効に活用するため、AIを用いたデータベース検索システムの導入に至った。
FRONTEOが開発した「KIBIT」は、専門家や業務熟練者が備える〝暗黙知〟を再現した人工知能。添付ファイルを含む文書情報から、キーワードだけでなく文脈も捉え文章の特徴量を抽出し、類似性を判断することができる。この特長を活用し、審査員の経験に依存することなく過去の類似案件を抽出できるシステムとして導入した。
導入テストでは、類似案件の検索から類似性判断までの時間は従来の10分の1近くまで短縮できる効率性の高さを確認している。また、複数の類似案件を同時に抽出できることにより、設備安全対策に関わる知見を最大限活用することが可能となる。同システムは今後、設備投資時審査で本格運用するとともに、生産現場の事故・異常情報にも応用展開する検討を進める。
昭和電工グループは、中期経営計画「The TOP 2021」の中で、「AI/IoTの強化」を進めている。今後も、生産現場でのAI/IoT活用を推進することで安全・安定操業、事業競争力強化を図っていく。