王子ホールディングス 卓球ラケット用素材にCNFシートを初採用

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2020年2月17日

 王子ホールディングスはこのほど、セルロースナノファイバーシート(CNFシート)実用化の第1弾として、一般消費者向け商品であるダーカー社の卓球ラケット用素材に採用が決定したと発表した。CNFは木質由来の天然素材で、高強度、高透明性など様々な特長を生かした用途展開が期待されている。

 王子HDは製紙業のコア技術をベースにしたCNFの開発を進め、透明連続シート製造に世界で初めて成功した。

 このCNFシートは熱寸法安定性、フレキシブル性を併せ持つことから、ガラスやプラスチックフィルムの代替としての期待が大きく、国内外、各方面からのサンプル需要の高まりを受けて2017年度後半にはCNFシートの実証設備を導入。これにより、幅広い分野でサンプル配布を進めると同時に、製造技術をさらに磨き上げ、連続生産による量産技術を確立している。

 CNFシートは、機械物性や表面性などのカスタマイズが可能なため、用途ごとの要求に合わせたシート、異素材と複合化できるシートなど、現在は個々の顧客ニーズに応じた開発を推進している。

 卓球ラケットは、数値で表しにくい「球を打った感覚(打感)」という官能評価が重要であり、その打感は卓球ラケットの素材の持つ反発力と弾力に左右される。例えば、反発力を上げようとすると、一方で弾力が下がってしまい、結果的に打感が悪くなる。

 王子HDは「卓球ラケットのベース素材である木材とCNFシートを複合化することで新たな打感を発現させる」という発想のもとテスト試作を繰り返し、反発力と弾力を共存させたCNFシートのスペック最適化に成功した。

 これにより、CNFのポテンシャルを最大限引き出す新たな打感領域の卓球ラケットを実現した。この卓球ラケットは、ダーカー社の新しいラインアップとして、今年4月以降に店頭販売される予定。

 王子HDは、今後もこれらのCNF製造技術を活用、進展させることで、さまざまな領域でのCNF実用化を牽引し、市場普及を積極的にリードしていく考えだ。