NEDOは新構造材料技術研究組合(ISMA)の組合員の産業技術総合研究所と、輸送機器の構造材料・部品などの非破壊分析向けに小型中性子解析装置を開発した。
同装置は解析用の放射線として透過力の高い中性子線を使うことで、従来のX線では透過できなかった、センチメートル厚の金属部品などの内部の結晶情報を、非破壊で分析することを可能にした。
自動車などに代表される輸送機器の軽量化は、省エネ化の促進やCO2排出量の削減に直結する、重要な技術開発の1つと位置づけられている。最近は様々な軽量部材で輸送機器を構成(マルチマテリアル化)することで、総合的な軽量化が図られている。
その場合、材料の物性がそれぞれ異なるため、組み合わせ部材の健全性が重要になるが、その評価には非破壊検査を通じて、結晶のひずみなどの変化を分析できることが必要だ。
そこで、NEDOはX線よりも透過力が高い中性子線に着目。これを用いたマルチマテリアル部材などの解析手法の確立に取り組み、世界で初めてブラッグエッジイメージング法に特化した小型装置を協力機関と短期間で開発し、最初の中性子の発生と結晶情報を含む透過スペクトルの計測に成功した。
ブラッグエッジイメージング法とは二次元検出器を利用して、画素ごとに試料を透過した中性子強度の波長分布(ブラッグエッジスペクトル)を測定し、結晶情報の抽出と画像化を行う測定法のこと。これにより、金属などで構成する部品や材料内部の広い面積(現状10㎝角)の結晶相・ひずみなどの結晶構造情報を、二次元画像として非破壊で観測できるようになった。
小型のため使用時は専有となり、自由な条件設定が可能なほか、小規模体制での運営により、産業ユーザーからの装置利用時間などに関する要望にも柔軟に対応できる。また、自動車部品を想定して、様々な試料サイズに適応できる試料室も設けた。これらにより、健全性の高い構造材料・部品の開発と輸送機器の軽量化の促進につなげることができる。
今後は中性子線の安定化や検出器の高感度化など、装置の性能向上を進め、2020年度の本格稼働を目指す。