富士フイルムはこのほど、富士フイルム富山化学にて、新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)向けに抗インフルエンザウイルス薬「アビガン錠」(一般名:ファビピラビル)の増産を開始したと発表した。同社グループ会社の設備増強に加え、国内外の企業との連携により実現したもの。
「アビガン」は、富士フイルム富山化学が開発し、2014年に抗インフルエンザウイルス薬として国内での製造販売承認を取得した薬剤。ウイルスのRNAポリメラーゼを選択的に阻害することでウイルスの増殖を防ぐというメカニズムを持つことから、インフルエンザウイルスと同種のRNAウイルスである新型コロナウイルスに対しても効果が期待される。すでに臨床研究や観察研究の枠組みの中で、COVID-19患者に対する「アビガン」投与が開始されている。
日本政府は、COVID-19がますます拡大する中、緊急経済対策の1つとして「アビガン」の備蓄量を200万人分まで拡大することを決定。今回、富士フイルム和光純薬にて医薬品中間体の生産設備を増強するとともに、原料メーカーや各生産工程での協力会社など国内外の企業との連携により「アビガン」の増産を推進する。
今後、段階的に生産能力を向上させて、今年7月には月産約10万人分(生産を開始した3月上旬と比べて約2・5倍)、9月には約30万人分(同約7倍)の生産を実現する方針。さらに、「アビガン」の原薬製造設備も増強し生産能力のさらなる拡大を図り、日本政府の備蓄増や海外からの提供要請に対応するとしている。