各国が経済活動再開の動き、コロナ第2波が懸念
世界の原油相場では、WTI価格が3月上旬以来、約3カ月半ぶりに40ドル台を回復した。新型コロナウイルスの感染拡大により落ち込んでいた世界経済に、ようやく再開の動きが強まってきたことに加え、OPECプラスの協調減産が進んでおり、需給バランスの改善が見えてきたことが背景にある。
とはいえ、原油需要が回復しているのはコロナ禍からいち早く脱した中国だけと言え、投資家の期待感が先行していることは否めない。仮にコロナの2次、3次感染が発生すれば投資マネーの逆回転が起こる可能性もあり、この先も上昇基調が続くかは不透明な状況だ。
WTIは、コロナ禍の影響による需要減少と、OPECプラスの減産動向で不安定な動きを続けている。3月上旬は40ドル台を維持していたものの、協調減産の合意が見送られたことから、下旬には20ドル台まで急落。さらに各国のロックダウンが進んだことにより、4月中旬には10ドル台となり、5月先物の引き渡し期限となった4月20日にはマイナス37ドルと異常値を記録した。
こうした中、5月にOPECプラスをはじめとした産油国が協調減産を再開したことに加え、中国の自動車生産が対前年比でプラスに転じるなど好材料が出たことなどから、WTI価格は上昇基調を強めた。6月に入り節目とみられた40ドルを前に足踏み状態となったものの、市場心理が改善したことで22日は40.46ドルを記録した。
今後については、未だコロナ禍の収束が見通せておらず、先行き不透明な状況に変わりはない。南米やアフリカなど新興国での感染者増加や、また、欧米などでも、感染者数が再び増加している地域も出てきており、ロックダウンが導入される可能性が出ている。さらに、米中対立が深刻化してきたことも懸念材料。以前の貿易戦争のように報復合戦になれば、経済回復の足を引っ張りかねない。いずれにせよ、しばらくは予断を許さない状況が続きそうだ。
なお、国際エネルギー機関(IEA)が発表した6月の月報によると、コロナショックを折り込み、2020年の原油需要を前年比810万BDの減少を見込んだ。ただ、前回予測(860万BD減少)からは上方修正しており、明るい兆しが出てきたと言える。一方、原油供給量は5月に過去最大の削減量を記録した。6月も産油国の減産体制の強化でさらに減少すると見ており、需給バランスの改善が期待されている。