ヤンセンファーマ(東京都千代田区)はこのほど、新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)を引き起こすウイルス「SARS‐CoV‐2」のワクチン候補「Ad26.CoV2.S」の国内第Ⅰ相臨床試験を開始したと発表した。20~55歳の健康な成人と65歳以上の高齢者の合計250人を対象に、接種時の安全性、反応原性(腫脹や疼痛などワクチン接種に予期される反応)、免疫原性の評価を行う。
ヤンセンファーマはジョンソン・エンド・ジョンソンの医薬品部門ヤンセンファーマグループの一員。同ワクチン候補は、風邪ウイルスの一種「アデノウイルス血清型26(Ad26)」を使用した組み換え体ベクターワクチン。非増殖型Ad26に新型コロナウイルスに特徴的なスパイクタンパク質の遺伝子情報を組み込み、接種後に体内で抗体を作る。ワクチン開発と大量生産のためのヤンセンの「AdVac」技術を活用。
同技術は欧州承認のエボラウイルスワクチン、開発中のジカウイルス、RSウイルス、HIVの各ワクチン候補の臨床試験にも使用され、9万例以上の投与実績をもつ。同ワクチン候補の米国での前臨床試験(サル)で、1回の接種で「中和抗体」などの強力な免疫反応を誘発し、接種後の感染防御を確認した。
これに基づき第Ⅰ/Ⅱa相試験(ヒト投与)を米国とベルギーで7月から実施、9月には第Ⅲ相試験へ移行予定。オランダ、スペイン、ドイツでも第Ⅱa相試験を予定している。臨床開発と同時に、生産能力拡充に向けたグローバルパートナーとの積極的な協議を進めており、安全性と有効性が確認されれば、海外では来年初頭の緊急時使用許可の取得を目指している。
同社は「病が過去のものになる未来をつくる」ために科学の力で病に打ち克ち、画期的な発想力で多くの人々に薬を届け、真心をもって癒し希望を与える、という方針を掲げ、がん、免疫疾患、精神・神経疾患、ワクチン・感染症、代謝・循環器疾患、肺高血圧症の分野での貢献のために注力している。