東京工科大学はこのほど、大学院バイオニクス専攻の研究グループが、ヒトラクトフェリン(hLF)が、脊髄損傷での神経再生阻害の主因となるコンドロイチン硫酸E(CS-E)に対して強力な中和活性を示すことを発見したと発表した。
WHO(世界保健機関)によると、世界で年間約25万~50万人の脊髄損傷患者が報告されている。高齢化社会が進む日本でも増加が懸念される難治性疾患の1つだが、現在有効な治療薬は存在しない。今回の成果が、難治性疾患である脊髄損傷に対する新たな治療薬の開発につながる可能性がある。
すでに、LF製剤の開発に特化したベンチャー企業のS&Kバイオファーマでは、CS-Eを分子標的とする脊髄損傷治療薬の開発に着手している。また、CS‐Eは軸索伸長阻害だけでなく、がんの浸潤・転移にも深く関わることが報告されており、今後、同研究の成果を創薬シーズとする脊髄損傷治療薬や抗腫瘍薬の開発が期待される。