帝人ファーマは4日、脳卒中の後遺症の1つである上肢痙縮の治療薬としてA型ボツリヌス毒素製剤「ゼオマイン筋注用 50単位、100単位、200単位」(一般名:インコボツリヌストキシンA)の販売を開始すると発表した。
同社は、これまで骨粗鬆症治療剤などの医薬品や、超音波骨折治療器などにより、筋骨格系疾患に対するソリューションを提供し、また、脳卒中後遺症などによる運動機能障害の改善を支援するリハビリ用として、歩行神経筋電気刺激装置や上肢用ロボット型運動訓練装置などの製品を展開してきた。こうした中、2017年に独・メルツ社から、同剤の日本国内での共同開発・独占販売権を取得し、上肢痙縮の新たな治療選択肢を目指して開発を推進。そして、今年6月に製造販売承認を取得し、11月に薬価収載となり、今回の販売開始に至った。
適応症である上肢痙縮は、主に脳卒中の後遺症として、上肢の筋緊張の増加や伸張反射の興奮性亢進により生じる上位運動ニューロン症候群の1つ。主な症状は、運動麻痺、屈筋反射亢進、病的反射出現、知覚障害などで、患者が日常生活をする上で動作の妨げとなる。
上肢痙縮の治療には、リハビリテーション、経口筋弛緩剤、A型ボツリヌス毒素製剤療法を含む神経ブロック療法などある。「ゼオマイン筋注用」は、末梢のコリン作動性神経終末に作用し、神経伝達物質であるアセチルコリンの放出を阻害することで随意筋の筋力を弱め、筋緊張状態を緩和する。特徴として、ボツリヌス菌により産生されるA型ボツリヌス毒素から複合タンパク質を取り除き、神経毒素のみを有効成分としていることで、中和抗体の産生により効果が減弱する可能性の低下が期待される。国内第Ⅲ相臨床試験では、手関節の屈曲のMASスコアに有意な改善が認められている。
同社は今後も、アンメットニーズの高い疾患に対して新たな治療選択肢を提供することにより、患者のQOL向上に貢献していく。