世界的に需給タイト継続、玉確保の動きが強まる
塩ビ樹脂(PVC)の1月分のアジア輸出価格は、インド向けが前月比140~150ドル高のCFR1450~1460ドル/t、中国・その他向けも同60ドル高の1160ドル/tで決着した。
台湾大手メーカーも、インド向け同70ドル高の1290ドル/t(ボリュームディスカウントなし)、中国向け同60ドル高の1160ドル/t(同なし)で決着している。インド向けは4カ月連続で毎月100ドル以上も上昇し、中国向けも5月を底に8カ月連続で上昇しており、2017年以降で見ると両地域とも市況は過去最高水準に達している状況だ。
PVCは世界的に需給タイトが続いている。コロナ禍から各国が経済活動を再開し需要が盛り上がってくる中、欧米メーカー各社が相次いでフォースマジュール(FM)を宣言したことで供給不足が常態化。10月からアジア向けの輸出価格は上昇基調を強めている。さらに足元では、コンテナ船不足からフレイトが急騰していることも、輸出価格を押し上げる要因となった。
こうした中、2月のオファー価格についても、下落に向かうとの見方は少ない。FM宣言した欧米メーカーが、いつ解除するか見通しが立たないことに加え、コンテナ船不足の状態もしばらく続くと見られる。12月に入り米国の1社がFM宣言を解除したものの、供給不足の解消には至っておらず、需給バランスが正常化に向かうまでには時間が掛かりそうだ。
地域別に見ると、インドは経済活動が立ち直りつつある。PVCは農業用パイプ向けに引き合いが強く、またインフラ需要も戻ってきているもよう。来年6月のモンスーン期を迎えるまでの需要期に入ったことから、今後も旺盛な需要が続く可能性が高い。ただ、オファー価格の急騰に対し、製品価格への転嫁が遅れているとの見方もある。すでに需要家は採算的に厳しい状況になっているため、この先、調整局面に入るとの指摘も出ている。
一方、中国も、域外品の流入が減少したこともあり、オファー価格が上昇基調を継続している。また、海外市況の高騰を受け国内カーバイド法塩ビを輸出に振り向けており、国内市況も高止まりとなっている。来年の春節休暇(2月中旬)までは、足元の状況が続くとの見方が強く、今後の中国市場動向が注目される。
なお、日本の11月のPVC輸出は、前年同月比18.8%減の4万7200tとなり、6月以降継続していた月6万t以上の水準から大きく減少した(VEC発表)。1社が定修に入ったことが要因だが、定修が明ければ再び輸出量が増加してくる見込み。仮に足元のペースが続けば、今年(暦年)の輸出量は68万t前後(前年66万6000t)となりそうだ。