アジア地域で需給タイト、中国も厳冬で玉確保に
宇部興産は、ナイロン原料であるカプロラクタム(CPL)について、1月(上旬決め)の韓国・台湾大手向け契約価格を前月比190ドル高の1600ドル/tで決着した。昨年9月以降から上昇基調を強めていたが、1月はさらに大幅上昇となり、2019年6月以降で最高値を記録する結果となった。
中国では自動車の生産が本格的に回復し、ナイロンが使用されるタイヤコードや高機能部材の需要が旺盛となっている。こうした中、原料メーカーのトラブルで一部のCPLメーカーの生産が低迷し需給バランスがタイト化したことが、価格を押し上げる要因となった。これに加え、世界的な製油所の稼働低下により原料であるベンゼン価格が高騰していることも、先高観につながっている。スプレッドについても、前月比130ドル拡大の965ドル/tに改善した。とはいえ、昨年4月から今月までの平均スプレッドは718ドルと、前年同期(846ドル)を下回っており、収益的にはまだ厳しい状況から脱したとは言えない。
一方、中国・SINOPECも、12月(下旬決め)の契約価格を前月比137ドル高(1050人民元高)の1453ドル/t(1万1700人民元)で決着。前月に引き続き大幅上昇となり、これが宇部興産の契約価格にも反映された。しかし、1月に入りスポット価格が下落基調となった。わずか4カ月の間に400人民元も上昇したため、需要家が様子見状態になったと見られる。SINOPECも1月の仮価格を段階的に切り下げ、今月12日には1415ドル/t(1万1300人民元)で打ち出したようだ。
中国内でのナイロンチェーンの稼働率を見ると、1月初旬はCPLが90%程度(12月初旬80%)、チップが70%半ば(前月並み)、ヤーン(糸)が80%強(前月並み)となっており、川上から川下まで高水準を継続。ナイロンチップの価格も、12月下旬には1700ドル/tまで上昇し、1月に入ってからは1800ドル/t超で取引されている。需要の好調さを背景に、川下のメーカーがCPL価格上昇分の転嫁を進めているようだ。
2月の契約価格についても、大きく崩れるとの見方は少ない。その要因として、アジア地域では需給タイトが緩和する可能性が低いことや、ベンゼンをはじめとした原料市況も世界的に高止まりしていることが挙げられる。
さらに、中国も一時弱含んだスポット市況が反転傾向にある。今年は厳冬になったことで、工業向けの天然ガスの使用が制限されることや、路面凍結など物流面での混乱が生じることが見込まれる。中国北部では都市封鎖に入る地域も出るなど、コロナ感染が拡大しつつある。こうした背景から、春節休暇を前にCPLの玉を確保する動きが強まっているようだ。しかし、行動制限が中国全土に拡大すれば、一気に経済が冷え込む可能性もある。いずれにせよ、春節明けまで市場は先行き不透明な状況となりそうだ。
なお、宇部興産のCPL工場(宇部、タイ、スペイン)は、副生品である硫安が春肥向けに好調なスペインをはじめ、各工場ともフル稼働となっている。