旭化成など スマートセルで原料酵素の生産性向上を実現

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2021年3月1日

 旭化成ファーマ、NEDO、産総研は25日、植物や微生物の細胞を用いて高機能品を生産するスマートセル技術を活用し、体外診断用医薬品の原料となる酵素「コレステロールエステラーゼ」の 生産効率向上に成功したと発表した。

 今回構築したスマートセル は、従来の微生物(野生株)と比べ30倍以上の生産能力を持つ。これにより、生産工程における電力消費量も低減できるため、CO2排出量を年間約23t削減(従来比約9.6%削減)する効果も期待できる。

 病院での診察や健康診断では、多くの体外診断用医薬品が使用されている。その1つである生化学検査試薬は大半が 酵素を主な原料としており、酵素の働きを用いて体内の物質の濃度を測定する。

 血中コレステロールを測定するコレステロールエステラーゼは、微生物のバークホルデリア・スタビリスなどから菌体外に分泌・生産されることが知られている。ただ、この野生株における分泌は複雑に制御されていることから、従来法に基づいた大腸菌を宿主とした遺伝子組換え技術による高生産化は困難。

 野生株を育種する古典的な方法での高生産化が試みられてきたが、生産量は野生株の約2.8倍までしか上昇させることができず、国際競争力があり低コストで高い生産効率が見込まれる新たな技術の開発が求められていた。

 こうした中、3者は2016年度から、生物細胞が持つ物質生産能力を人工的に最大限まで引き出し、最適化した細胞(スマートセル)を使って省エネルギー・低コストで高機能品を生産するスマートセルプロジェクトに取り組んできた。

 そして今回、新規構成型プロモーターと宿主バークホルデリア・スタビリスの機能改変を組み合わせることで、コレステロールエステラーゼの生産能力を野生株の30倍以上に引き上げたバークホルデリア・スタビリススマートセルを構築することに成功。これにより年間に使用する培養量と製造回数を削減しても従来と同量のコレステロールエステラーゼ生産が可能となった。

 旭化成ファーマは今後、このスマートセルで生産したコレステロールエステラーゼを早期に事業化し、高機能な化学品や医薬品原料などを生産する「スマートセルインダストリー」の実現を目指す。

スマートセル技術でコレステロールエステラーゼ の生産効率を向上
スマートセル技術でコレステロールエステラーゼ の生産効率を向上