モンスーンやコロナ影響で需要減、輸入品も増加
塩ビ樹脂(PVC)の7月分のアジア輸出価格は、インド向けが前月比130~150ドル安のCFR1450ドル/t、中国・その他向けは同100ドル安の1240ドル/tで決着した。台湾大手メーカーも、インド向け同130ドル安の1390ドル/t(ボリュームディスカウントなし)、中国向け同100ドル安の1240ドル/t(同なし)と、同程度の値下げで決着している。
PVCは、異常気象やトラブルなどで需給がひっ迫し、輸出価格は騰勢を強めていた。しかし、5月頃から需要家の間で買い控えなどの動きが強まったため、輸出市場は調整局面を迎えている。6、7月のわずか2カ月間でインド向けが370ドル安、中国・その他向けは300ドル安と大幅に下落しており、3月の水準にまで戻っている状況だ。
その背景として、価格の高騰から需要家の購買意欲が低下していることに加え、コンテナ船の不足からアジア地域のメーカーが中東やアフリカなどに輸出できず、インドや中国向けに輸出が増加したことが挙げられる。需給バランスが緩和傾向となったことで、オファー価格は2カ月連続で大きく下落する結果となった。PVCメーカーにとっては、依然として輸出価格は高水準にあり、収益を確保できる状況にはある。とはいえ、ナフサ高でスプレッドが圧縮されてきており、事業環境が変化しつつあると言えるだろう。
地域別に見ると、インドは、不需要期であるモンスーン期(6~9月)に入ったことに加え、新型コロナウイルスの変異株の感染が拡大し、PVC製品を生産する工場の稼働が低下している。さらに製品価格への転嫁遅れで採算が悪化し、需要家の在庫の消化も進んでいないもよう。
こうした中、輸入品が増えてきたこともあり、市場に先安観が出てきたことが価格の下落につながった。8月については、価格の下落により買いが戻ることが期待されている。しかしコロナ影響など先行き不透明な要素が大きく、輸出価格についてはもう一段安になるとの見方も出ている。
一方、中国は、好調だった内需の勢いが鈍化しており、国内カーバイド法塩ビの価格も弱含んでいる。また、海外市況が下落してきたことで、輸出していた一部メーカーが国内に回帰してきているもよう。国内価格の下落が下押し要因となり、中国向けの輸出価格も反転してくるまでにはしばらく時間が掛かりそうだ。
なお、日本の5月のPVC輸出は、前年同月比22.5%減の3万3900tとなった(VEC発表)。4万t台を割り込んだ4月からさらに減少し、昨年5月以降で最も輸出量が低下している。内需の回復や大手メーカーの定修などが影響したと見られ、6月以降の輸出動向が注目される。