出光興産はこのほど、権益を所有する豪州のマッセルブルック石炭鉱山の採掘跡地を利用した揚水発電プロジェクトの事業化へ向けた詳細検証を開始すると発表した。
今回の事業化検証は、同社と豪州大手電力会社AGLエナジー社との共同設立会社であるマッセルブルック ポンプド ハイドロ社(豪州シドニー)を通じて行い、ニューサウスウェールズ州政府より補助金として最大945万豪ドル(約9億2000万円)の受領も決定している。
同石炭鉱山は100年以上の歴史をもち、出光興産は1989年に権益を取得した。今年で終掘となるが、長年培ってきた豪州での事業基盤を活用し、同鉱山の採掘跡地を様々な再エネの拠点として活用する検討を進めている。その1つとして、同鉱山の採掘跡地と隣接する丘陵地(ベルズマウンテン)の地形に着目した揚水型水力発電の事業化に向け、2019年から基礎検証を実施してきた。その結果、起案のコンセプトでの建設が技術的に可能であることが確認できたため、事業化へ向けた地質調査・グリッド接続・建設コストの算定といった詳細な事業化検証へ移行する。
豪州は風況・日照など気候条件が良好で国土が広く、再エネの可能性に富むことで注目が高い。豪州政府は脱炭素化に向けたエネルギー転換を進めており、太陽光発電や風力発電といった再エネの導入を促進している。ただ、再エネは発電時間帯と電力需要時間帯に差があり、導入拡大には電力系統の安定化に課題がある。揚水発電による大規模なエネルギー貯蔵は電力系統安定化に寄与し、再エネ・トランジションへの橋渡しとなる。
出光興産は約40年にわたり石炭鉱山の操業で培ってきた事業基盤を活用しながら、今後も豪州のエネルギー転換に積極的に対応していくとともに、低炭素・脱炭素事業の創出に取り組んでいく。