ダイセルは11日、2023年3月期の連結業績を発表した。売上高は前年比15%増の5380億円、営業利益6%減の475億円、経常利益9%減の520億円、純利益30%増の407億円となった。自動車市場や電子デバイス市場の需要回復遅れの影響を受けたが、マテリアル事業での拡販や販売価格の是正などにより増収になった。営業利益は需要回復の遅れや原燃料価格の上昇など厳しい事業環境で減益となったが、コストダウンや、将来を見据えた収益改善策を着実に実施し、EBITDAは微増(791億円)を確保した。
セグメント別にみると、メディカル・ヘルスケア事業は増収減益。コスメ・健康食品事業は、中国ロックダウンの影響により化粧品原料の販売数量が減少したものの、販売価格の是正や、健康食品素材の販売数量が増加した。ライフサイエンス事業は、キラル関連製品の販売が海外で好調に推移したことや、為替影響も寄与した。
スマート事業は減収・営業損失。ディスプレイ事業は、高機能フィルムの販売数量が増加したが、液晶パネルの在庫調整の影響により、酢酸セルロースの販売数量が減少した。IC/半導体事業は、液晶パネル材料向けの販売数量が減少したものの、半導体材料は需要が好調に推移し、販売数量が増加した。
セイフティ事業は増収・営業損失。モビリティ事業は、半導体不足や中国ロックダウンの影響を受けたが、自動車生産が前年度より回復し販売数量が増加した。
マテリアル事業は増収増益。酢酸は、定修に伴う販売調整があり市況も軟化した。酢酸誘導体は、酢酸エチルの販売数量が減少したが、販売価格を是正した。アセテート・トウは、販売数量の増加、販売価格の是正、為替の影響が寄与した。カプロラクトン誘導体は、自動車向け塗料保護フィルム用途などの需要が好調に推移し販売数量が増加した。
エンジニアリングプラスチック事業は増収増益。自動車部品メーカーの在庫圧縮の影響を受けたものの、販売価格の是正や円安が寄与した。
2024年3月期の通期業績予想は、売上高6%増の5720億円、営業利益12%増の530億円、経常利益6%増の550億円、純利益8%増の440億円を見込む。酢酸原料プラントの商業運転開始などで減価償却費が増加するものの、各事業における販売数量増加及び販売価格是正、コストダウンの徹底により増益を目指す。