塩ビ 7月のインド向け輸出価格、1000ドル超に上昇

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2024年7月3日

コンテナ船のひっ迫が要因、玉確保の動き強まる

 塩ビ樹脂(PVC)の7月分のアジア輸出価格は、インド向けが前月比170ドル高の1060ドル/t、中国その他向けが同25ドル高の820ドル/tで決着した。インド向けは16ヵ月ぶりに1000ドル台に載せ、中国向けは3ヵ月ぶりに800ドル台を回復している。

 中東リスクによる海上輸送の混乱が続く中、米国やEUの政府が中国産EVの関税引き上げを相次いで発表。前倒しで中国からEVを輸送する動きが強まり、コンテナ船が世界的にひっ迫する事態となった。インド向けの便数も減少し、PVCの需給バランスが一気にタイト化。需要家は玉の確保を優先するため、フレイト分も含めた大幅な値上げを受け入れている。これに連動するかたちで、中国向けも一段高となった。台湾大手メーカーも、インド向け同150ドル高の980ドル/t(ボリュームディスカウントなし)、中国向け同25ドル高の820ドル/t(同なし)で決着。インド向けは10ヵ月ぶりに900ドル台を記録している。

 地域別にみると、インドはモンスーン期(6―9月期)に入ったものの、農業用パイプなどの引き合いが強く、需要に落ち込みが見られない。また、長期間にわたった首相選挙が終了し、秋にはインフラ工事が動き出すことも想定されている。需要家が在庫を積み上げる中、コンテナ船不足を背景に中国品の流入にブレーキがかかり、また米国品も利幅が大きい南米や中東などに振り向けられたことから、市場に先高観が強まっている状況だ。7月以降の輸出価格も、さらに昇する可能性が高い。ただ、需要家の間からは急激な値上げに対して抵抗が強まることも予測され、1100ドルで頭打ちになるとの指摘もある。

 一方、中国向けの輸出価格は、インド市況に引っ張られて上昇しているものの、PVCの内需は不動産不況の長期化により低迷が続いている。前月は、政府の不動産対策が好感され、先物市場が上昇する場面もあったが、足元では6000元前後と以前の水準以下に戻ったようだ。7月の契約価格についても、インド価格の上昇により連れ高になることが想定される。ただ、輸送の混乱は中国品の輸出減につながることに加え、欧米に向けたPVC製品の輸出にも影響が出てくると見られる。国内の需給バランスがさらに悪化し、契約価格の重荷になることも想定される。

 なお、日本の5月のPVC輸出は前年同月比23.4%減の3万4200tとなり、前月から約1万3000tも減少した(VEC発表)。大手メーカーの話では、コンテナ船の手当てができなくなり、計画よりも輸出量が約20%減少したという。各社は船舶の確保に注力しており、6月の輸出量は持ち直してくることが想定される。