エボニックとAMSilk 持続可能なシルク素材の開発に向けて提携を拡大

, , ,

2025年10月15日

 エボニック インダストリーズ(ドイツ、エッセン、エボニック)は15日、シルクタンパク質由来の先進バイオ素材の世界的リーダーであるAMSilk(エーエムシルク)と、持続可能なシルクタンパク質を工業規模で生産するための長期契約を締結し、両社の提携関係をさらに拡大したと発表した。2023年に締結した製造契約に基づき、両社はエボニックのスロバキア拠点においてAMSilkの高性能シルク製造ラインの稼働を開始した。この革新的なバイオ素材は環境負荷を最小限に抑えながら生産され、高級ファッションや高性能が求められる自動車内装用途向けに設計されている。

 エボニック ヘルスケア事業部門責任者のグイド・スクドラレック氏は、「AMSilkとの提携は、バイオテクノロジーを通じて素材の未来を共に形成することができるかという好例だ。サステナブルなシルクタンパク質の生産を拡大することで、高精度バイオソリューションの製品群を拡充するだけでなく、生活を改善し、可能性の定義を再構築するソリューションを創出する」と述べている。

 エボニックはスロバキアにあるバイオテクノロジー生産拠点に、専用の製造ラインを新設した。先進的なインフラ、高度なシステム、再生可能エネルギーを備えたこの施設は、AMSilkの高性能シルクタンパク質を毎月数トン規模で安定生産することができる。AMSilkのプロセス要件に合わせて設計されたこのラインは、スピニンググレード(紡糸用)バイオマテリアル向けの認証済み工業品質基準に適合しており、同社の市場参入段階を後押しする。

 AMSilkの最高生産責任者クティボル・コフトヴィッチ氏は、「信頼できるパートナーであるエボニックとこれまで構築してきた良好な協力関係を基盤に同契約を締結し、AMSilkのバイオ素材を精密発酵する専用製造ラインを共同設計した。同設備を稼働させることで、生産性と効率性が向上し、使用する材料コストも低減される。この取り組みにより、次の成長段階に向けた基盤となり、お客様への安定供給を確保する」と述べている。

 AMSilkは、エボニックが製造するシルクタンパク質粉末を高性能な糸へと加工している。この糸は、欧州における製造からサプライチェーン全体において透明性をもち、優れた製造品質と規制適合性を実現している。AMSilkのバイオマテリアルは持続可能性を重視した設計になっている。ビーガン対応で生分解性を有し、再生可能な植物由来炭素から作られるため、ライフサイクル終了時にマイクロプラスチックを一切残さない。AMSilkは、約260億ユーロの規模を持つシルク、カシミア、メリノなどタンパク質繊維市場全体をカバーしており、このうち同社が実際にこのサービス可能な市場の規模は約160億ユーロにのぼる。

 エボニックは、菌株の開発やプロセス最適化から大規模製造に至る発酵技術の深い専門知識を活かして、医薬品添加剤、パーソナルケア、先進的な機能性食品、天然同一素材など、ライフサイエンス業界における革新的技術のスケールアップを支援している。米国と欧州の拠点に4,000立方メートル以上のCDMO発酵能力を有し、バイオテクノロジー製品のグローバルなワンストップ・ショップとして、あらゆる規模や複雑性を有するプロジェクトをサポートしている。

 エボニックはバイオテクノロジーを活用し、多様な市場において高付加価値で持続可能なソリューションを提供するとともに、高精度バイオソリューションの製品群を拡大している。AMSilkとの提携は、バイオテクノロジーが化石由来製品に代わる革新的な代替品を創出し、産業全体で環境負荷を低減する可能性に対して両社の共通した信念を反映している。バイオテクノロジーは、再生可能な原料を用い、より穏やかな条件下で操作できるうえ、排出物や廃棄物を抑制できることから、多くの場合、化石資源由来または従来型の化学プロセスに比べて、持続可能性に優れている。