富士フイルムはこのほど、欧州拠点のフジフイルム・マニュファクチャリング・ヨーロッパ(オランダ)に、培地を生産する新工場を建設すると発表した。
投資額は約30億円。今年中に着工し、2021年内の稼働開始を予定。欧州では初となる培地生産工場を建設することで、日米欧の3拠点体制にし、細胞培養に必要な培地のさらなる事業拡大を図る。
新設するのは、cGMPに対応した培地の生産工場で、北米に次ぐバイオ医薬品製造企業の集積地である欧州に現地生産体制を整える。
cGMPとは、米国FDA(食品医薬品局)が定めた医薬品や医薬部外品の、最新の製造管理・品質管理規則のこと。これにより、受注から納品までのリードタイムを短縮し、顧客サポート力を強化するとともに、伸長する培地需要に対応していく考え。
新工場では、日米の生産拠点と同様に動物由来成分を含まないカスタム培地を生産し、バイオ医薬品製造や再生医療などの用途に提供する予定だ。培地は、細胞の生育・増殖のための栄養分を含んだ液体や粉末状の物質で、バイオ医薬品や再生医療製品などの研究開発・製造時の細胞培養に必要不可欠なもの。
現在、抗体医薬品を中心としたバイオ医薬品の需要増加や、細胞を用いた治療法の拡大に伴い、培地市場は拡大しており、今後も年率約10%の伸長が見込まれている。
富士フイルムは、2017年に総合試薬メーカーの和光純薬工業(現富士フイルム和光純薬)を買収し、培地事業に参入した。2018年には、培地のリーディングカンパニーであるアーバイン・サイエンティフィック・セールス・カンパニー(現フジフイルム・アーバイン・サイエンティフィック)を買収し、培地ビジネスを拡充させた。
現在、高い研究開発力や品質管理力により、顧客ニーズにあわせた最適なカスタム培地などを開発・提供する。また、日米に保有するcGMP対応の生産拠点を活用し、全世界の製薬企業やバイオベンチャー、アカデミアなどに製品を供給している。
今後は、日米欧の3拠点体制の下、高品質な培地を安定供給し、顧客満足度をさらに向上させていく。