《化学企業トップ年頭所感》トクヤマ 横田浩社長

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2020年1月9日

 2019年は世界の至る所でリベラル・自由貿易といった価値観に対する揺り戻しや覇権主義、保守主義の台頭など世界の政治・経済が混迷を深めた1年だった。

 そうした情勢下、当社も米中貿易摩擦に端を発した5Gの立ち上がりの遅れにより、エレクトロニクス関連製品を主力とする特殊品は大きく減収減益となったほか、中国・インドの景気減速により化成品も計画を大きく下回る結果となった。

 このように、中期経営計画に掲げる4つの重点課題のうち、財務体質改善を除いては、まだ十分な成果を上げていない。トクヤマビジョンに掲げる2025年のあるべき姿の実現に向けて、残りの3つの重点課題(組織風土の変革、事業戦略の再構築、グループ経営の強化)に対する取り組みを強化する。

 トクヤマの強みを徹底的に追及する一方、将来のトクヤマの事業ポートフォリオを睨んでの事業の見極め、再編などに道をつけていく。

 これに加え、大きな課題としてCO2排出量削減、中長期の研究開発戦略が挙げられる。特にCO2対策に関しては、バイオマス燃料の利用、省エネに加え、新技術導入やIoT活用を含めたプロセス革新やCO2の利活用を強力に推し進めていくべく、1月1日にCO2プロジェクトグループを発足した。大学、官庁などとも連携を加速していく。

 また中長期開発についてはMI活用や先端分野での人的ネットワーク構築が最大のカギとなるため、そうした取り組みを積極的に進める。

 一方、本年は現中計の最終年であり、各部門においてはその達成に向けて取り組んでいくことは勿論だが、既に次期中計に向けての議論をスタートしている。次期中計における最重点目標は「トップ戦略の実現」だ。

 2020年はそれに向けて、各事業におけるトップ戦略の定義、実現するための戦略・実行計画策定の年となる。今年は2025年に向けて大きく飛躍するための足場をしっかりと固めるという意味においても極めて重要な年に位置付けられる。

 また、会社は人材力がすべてと考えており、経営陣を含めた役職員1人ひとりの意識と行動の変革が欠かせない。変革は「好奇心」からであり、好奇心は普段からの勉強によって生まれる。これはいいと思ったら、遊び心を持ってトライすること。スピード感を持って何をしたかが大事なのだ。そうした行動スタイルが普通になることが組織風土改革と言える。

 新年度より新人事制度がスタートするが、その最大の目的は人材開発だ。目指すべき人材像を明確にし、それに向かって1人ひとりがストレッチのきいた目標を設定し実行する。OJTに加え、Off‐JTも充実させ、さらに意欲のある人には国内外問わず様々な成長機会を提供する。変革意識の強い、他社に負けない人材集団を作りたいと思う。

 2020年は好奇心とスピード感に満ちた活力ある若々しい組織風土の実現、飛躍への足場固めの1年とするべく頑張ろう。