NEDO 小型軽量な自然冷却型有機熱電モジュール開発

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2020年2月4日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、有機熱電材料で作るモジュールの熱と電気の抵抗を最適化し、自然冷却が可能な有機熱電モジュールを世界で初めて開発した。

 100~120℃の低温熱源に設置するだけで、測定データなどを無線通信するための十分な電力が得られることを実証した。さまざまな場所の未利用の低温熱源から電力を得ることで、IoT社会に欠かせない無線センサーネットワーク機器への実装が期待される。

 さまざまな情報をリアルタイムで相互通信するIoTは加速的に実用化が進むと期待されており、その市場規模は今年8兆円を超えると予測されている。IoTには、無線通信技術が必須だが、電源が有線であっては意味がないため自立型電源の開発も必要となる。

 有機熱電材料は、非常にフレキシブルな熱電材料で、加えて安価な原料と簡易なプロセスで素子が作製できるため、製造コストの低さと製造時の省エネルギー効果からも有望な材料。NEDOは有機熱電変換材料の開発とモジュール化の技術開発事業に注力しており、今回、産総研は電気抵抗と熱抵抗を最適化した構造の有機熱電モジュールを製作した。

 導電性高分子として知られる「PEDOT/PSS」を基本材料にしたモジュールの導電部材(金属)の熱伝導が大きいことがモジュール全体の特性を制限していることに着目。導電部材の電気抵抗と部材間の接触電気抵抗をできるだけ増やさずに熱抵抗を可能な限り高める新たな設計を行った結果、この有機熱電モジュールを100~120℃の低温熱源に設置するだけで、測定データなどの無線通信に十分な電力が得られることをスマートフォン用無線温度・湿度センサーを用いて実証した。自然冷却で無線通信用電源として動作できる有機熱電モジュールは世界初となる。

 今回開発した有機熱電モジュールは、放熱フィンなどを使わない自然冷却でも無線センサー用電源として利用できるため、小型・軽量で製造コストが低い上に、冷却のためのコストとエネルギーが不要。熱さえあればすぐに使えるため実用範囲が大きく広がり、様々な場所の未利用の低温熱源から電力を得られるので、無線センサーネットワーク機器などの電源として搭載することで、IoT機器の実用化が加速的に進むことが期待される。

 今後、NEDOと産総研は、有機熱電材料のさらなる特性向上とモジュール構造の改良を行い、より低温の熱源で使用できる有機熱電モジュールの設計開発を進めていく。