東京大学大学院新領域創成科学研究科、同マテリアルイノベーション研究センター、産業技術総合研究所 産総研・東大先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ、物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI‐MANA)の共同研究グループはこのほど、洗濯のりにヒントを得て、高精細にパターニングされた電極を有機半導体に取り付ける手法を開発した。
さまざまな機能性を持つ電子素子を駆動させるためには、電圧や電流を入出力するための電極が必要不可欠。電極は通常金属で、高真空下で大きなエネルギーを用いて成膜されることが多く、電極の設置面へのダメージを抑え、接着力など下地との相性を最適化することも重要な課題だった。
こうした中、同研究グループは、洗濯のりの成分であるポリビニルアルコールが乾燥すると固まり、水にあうと簡単に溶けることを利用し、基板上で高精細にパターニングされた電極をポリビニルアルコールなどとともに電極フィルムとして引き剥がし、半導体上に移し取る手法を開発。
さらに、たった一分子層(厚さ四㎚)からなる有機半導体に金属電極を取り付け、半導体の機能を十分利用できることを実証した。取り付け先の制約は極めて少なく、曲面や生体などへの応用も期待できる。
今回の成果により、さまざまな積層デバイスへの応用が可能となり、将来の産業応用に際し低コスト・フレキシブルエレクトロニクス用のプロセスとしての利用が見込まれる。
なお、今回の研究成果は、英国科学雑誌「Scientific Reports」(3月13日版)に掲載された。また、同研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金「単結晶有機半導体中電子伝導の巨大応力歪効果とフレキシブルメカノエレクトロニクス」「有機単結晶半導体を用いたスピントランジスタの実現」の一環として行われた。