NEDO 室温付近で高性能を示す熱電変換材料を開発

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2020年6月16日

 NEDOはこのほど、産総研、未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合(TherMAT)と共同で、セレン化銀(Ag2Se)を使用した、室温で高い性能を示す熱電変換材料を開発した。

 熱と電気を相互変換できる熱電変換技術は、熱エネルギーを電気に変換する熱電発電デバイスと電気で冷却する熱電冷却デバイスに応用できる。熱電発電は、自動車や工場から排出される高温(400℃以上)の未利用熱を対象に研究開発が進められてきたが、産業分野では低温(200℃未満)の未利用熱量が総未利用熱量の76%を占めていることから、低温の未利用熱の利用が求められている。またスマート技術の発展で、電子機器用の自立電源や熱制御が課題となり、室温・高効率の熱電発電、熱電冷却デバイスへの期待が高い。

 室温付近(100℃以下)で使用できる唯一の実用熱電変換材料としてテルル化ビスマス(Bi2Te3)があるが、熱電変換技術の普及には変換効率の向上が不可欠。熱電性能指数ZTは、熱電出力因子が高く熱伝導率が低いほど高くなる。Ag2Seは熱伝導率が低いことからn型熱電変換材料として近年注目されているが、熱電出力因子が低いためZTは低い。

 今回、Ag2Seの走査型透過電子顕微鏡を用いた観察により、直方晶系構造中にある微量の単斜晶系構造が電荷キャリアの移動を妨げていることと、キャリア濃度が熱電変換材料としては高すぎることが分かった。単斜晶系構造の抑制を熱力学的に検討した結果、Seをわずかに過剰にし、硫黄(S)をわずかに添加することで、結晶構造を直方晶系に安定化させることができた。

 これによりキャリア移動度が増加するとともにキャリア濃度も減少。熱電出力因子は改善し、Bi2Te3と同等レベルのTZを達成した。ナノスケールでの結晶構造制御で、電荷移送キャリアの移動度の向上とキャリア濃度を最適化し、高い性能を実現。材料設計指針として、ナノメートル領域での構造制御が有用であることを実証した。

 今後、IoT用電子機器などの自立電源や電気機器の局所冷却などへの利用が期待される。