デンカはこのほど、米・環境保護庁(EPA)が、米国子会社デンカ・パフォーマンス・エラストマー社(DPE)がEPAに提出したクロロプレンモノマーの健康への影響を研究する最先端の生理学的薬物動態(PBPK)モデルに基づく評価手法に関し、査読プロセスに進む旨を公表したと発表した。同モデルが採用されれば、2010年の統合リスク情報システムで策定された毒性評価に抜本的な変更が加えられる可能性がある。
2015年の国家大気有害物質評価(NATA)の中でEPAは、この毒性評価に基づき、歴史的に見てDPEの工場(ルイジアナ州ラプラス)から排出されるクロロプレンモノマーが近隣住民の健康リスクを生じさせていると指摘。同工場は、1969年以来デュポン社が操業してきたもので、2015年にDPEが取得した。
DPEは同モデルを2019年にEPAに提出し評価されてきたが、現在EPAは査読プロセスの第1段階にあたるパブリックコメントを募集している。2010年の毒性評価の見直しをDPEが働きかけてから、今回の査読プロセスへの移行に至るまで5年近くを要した。
同モデルの評価結果は、有識者による疫学的研究あるいは州政府によりまとめられた近隣の健康データにも裏付けられており、同工場で勤務してきた1200人以上の従業員を含む、複数のクロロプレンモノマー製造工場の勤務者を対象とした外部専門家による疫学的研究や、ルイジアナ腫瘍統計局により実施された健康統計調査とも整合。これらは全て、約50年間操業している同工場の勤務者や近隣住民の健康リスクには影響がないことを示唆している。
これに加え、DPEは自発的に3500万ドル(約40億円)以上を投資し排出量削減設備を導入したことにより、クロロプレンモノマーの排出量を85%削減した。引き続き、DPEは州および連邦規制当局と協力して、化学物質に関する最善の科学を追究するとともに、さらなる環境負荷低減に努めていく考えだ。