日本触媒は1日、リチウムイオン電池(LIB)用の新規電解質LiFSI「イオネル」について、独自プロセスによる新規製造設備(年間生産能力2000t)の建設に向け、「イオネル建設チーム」が設備設計に入ることを決定したと発表した。これは、「イオネル」の需要が拡大しており、既存設備(同300t)では不足することに対応したもので、立地場所は日触テクノファインケミカルに建設する。
近年、環境問題への意識の高まりから、省エネ・低公害の次世代自動車の代表的存在である電気自動車(EV)に対する期待は高く、EV市場は着実に拡大が続く。「イオネル」は、EV向けLIBの電解質に使用することで、低温から高温まで広い温度範囲で、電池のサイクル特性、レート特性、保存安定性の向上に著しい効果を発揮することから、電解質の添加剤用に限らず主剤として採用され、需要がアジアを中心に伸長している。さらに「イオネル」は、全固体電池などの次世代革新電池の電解質としても性能向上に効果を発揮することから、需要のさらなる拡大が期待されている。
LiFSIは高純度化が困難な物質であり、その生産や品質管理には高度なノウハウが必要とされるが、日本触媒はこれまで培ってきた独自の生産技術力を生かし、年間2千tを安定生産する技術を確立。また、「イオネル」は同社特許により保護された高純度LiFSIであり、品質面・価格面・知財面で、安心して使用できる。
新規製造設備の商業生産は2023年春をめどに開始する予定で、2024年には100億円超の売上高を目指す。なお、LiFSI市場が世界的に拡大することが想定されることから、2025年以降の需要に対応するため、欧州での新規設備投資計画も検討している。