石炭動向を中心に説明、オンラインも参加者増加
出光興産は4日、「第17回アポロエナジーミーティング」を開催。コロナ禍の影響により初のオンライン開催となったが、前年を上回る150社540人の関係者が参加した。同ミーティングは、電力、鉄鋼、化学といった同社の取引先に、石油・石炭をはじめとした主要エネルギーの需給・価格動向などの説明を行うもの。カーボンリサイクルが注目を集める中、石炭事業の将来や環境対応などについて発表が行われた。
開会の挨拶に立った石炭事業部の児玉秀文部長は「脱炭素の動きが加速している。菅首相が所信表明で2050年カーボンニュートラル宣言を出し、大きな転換点になると見られる。石炭についても非効率石炭火力のフェードアウトが発表され、対応が求められている状況だ。ただ、石炭はアジアの国々にとって非常に重要なエネルギーだ。当社としても安定供給を果たすとともに、CO2の固定化や有効利用、またバイオマス燃料といったグリーンソリューションにも取り組んでいく」と述べた。
続いて経済産業省資源エネルギー庁資源燃料部石炭課長の土屋博史氏が「カーボンリサイクル政策について」をテーマに基調講演を行った。土屋氏は「カーボンニュートラルを実現するためには、カーボンリサイクルをはじめとした革新的なイノベーションが必要だ。日本の強みを生かせる分野であり、当省も関係各所と連携しながら施策を進めていく」と語った。
カーボンリサイクルとは、CO2を資源として捉え、これを分離・回収して、鉱物化や人工光合成、メタネーションによる化学品、燃料、鉱物などへ再利用を目指すもの。技術ロードマップでは、フェーズ1(現状)、フェーズ2(2030年)、フェーズ3(2050年以降)が打ち出され、現時点では多種多様なものが着手されている。
「CO2を再利用するには水素がカギを握るが、まずは水素を使用しない製品から事業化がスタートしていくと見ている」とし、「CO2を使いながら既存品の価格と同等にしていくことが大きなポイント」と指摘した。さらに国際的な取り組みを紹介し、「欧米ではスタートアップなどに国家プロジェクトとしてバックアップしている。マラソンでいえば5、6カ国が先頭集団を形成しており、日本はその中にいる。数年の間に事業化の種を仕上げていきたい」と強調した。
続いて、出光興産の担当者が、石炭事業部で行う環境対応を説明。石炭との混焼用のバイオマス燃料「ブラックペレット」ついては、2022年からの本格供給に向け、来年から商談に入っていくとの見通しを示した。またボイラ制御最適化システム「ULTY-Vplus」では、工場や発電所に効率改善(1%)を訴える。さらに、炭酸塩化によるCO2固定化技術の実用化にも取り組んでいく。同社は「今後も環境に調和した石炭事業を推進していく」考えだ。
続いて、今後の石炭需給市況動向や、各地域の子会社(豪州、インドネシア、中国)の石炭事情の報告が行われた。日本郵船の担当者がドライバルク船マーケット動向などについて発表を行った。一方、原油情勢では、米国大統領交代が市場にどんな影響をもたらすかについて見通しを示した。貴重な報告に対し参加者からは多数の質問が寄せられるなど、ミーティングは盛況となった。