産業技術総合研究所(産総研)と電気通信大学はこのほど、医療・環境診断や生体イメージングに適用する全可視光領域発光の「虹色発光標識のポートフォリオ」を共同開発したと発表した。
生物発光を使うバイオアッセイや癌のイメージングなどが注目され、特に最近はウイルス検出などの医療診断の関心が高い。しかし、生物発光は発光色が限られ、特に海洋生物由来発光は短波長の青~緑色に偏り、ヘモグロビンによる吸収や発光標識間の干渉で生体イメージングには不向きだ。長波長の黄~赤色発光がなく、マルチカラーイメージングによる効率的なバイオアッセイや医療・環境診断ができなかった。
産総研は化学物質生理活性の発光可視化の研究で、人工生物発光酵素群「ALuc」や赤色蛍光色素がついた発光基質を開発。電通大はホタルや海洋生物由来の発光システムで発光を長波長化・多色化する基質群を合成してきた。
今回、両者の技術を組み合わせ、黄色より長波長の発光やマルチカラーイメージングを実現する生物発光システムを開発。海洋生物由来の発光酵素に共通するセレンテラジン骨格と、発光エビ由来の発光酵素「NanoLuc」と反応して高輝度発光するフリマジンを参考に、13種の発光基質を開発した。
ウミシイタケ発光酵素「RLuc」と「ALuc」に発光するが「NanoLuc」には発光しないもの、「ALuc」のみ、「NanoLuc」のみに発光するもの、「RLuc」に特に強く発光するものがあり、天然のセレンテラジンは「ALuc16」に強く発光した。これらの組み合わせで、青色~近赤外の様々な発光色を生み出せる。
相互選択性が非常に高い組み合わせもあり、発光信号間の干渉のないバイオアッセイなどへの応用により、例えば7つのバイオマーカーの同時計測による各種診断の迅速・簡便化などが期待できる。さらにウイルスを高感度で検出できるバイオアッセイや、赤色発光による動物個体内の癌転移などを可視化できる可能性もある。
今後これを利用した医療・環境診断研究に加え、長波長領域でより高輝度で化学的に安定な虹色発光標識ポートフォリオや、動物個体内での生体イメージングを目指す考えだ。