塩ビ樹脂 3月のインド向け輸出は10カ月ぶりに下落

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2021年3月2日

転嫁遅れで調整局面、トラブル再発で4月反転も

 塩ビ樹脂(PVC)の3月分のアジア輸出価格は、インド向けが前月比120ドル安のCFR1480ドル/t、中国その他向けは同20ドル高の1210ドル/tで決着した。

 インド向けは、日本品の2月価格が1600ドル/tにまで高騰していたため調整局面となり、ロックダウンでオファーが成立しなかった昨年5月以来、10カ月ぶりの下落となっている。とはいえ、需給がタイトな状況に変わりはない。台湾大手メーカーは、インド向け同20ドル高の1340ドル/t(ボリュームディスカウントなし)、中国向け同20ドル高の1210ドル/t(同なし)で決着している。

 PVCは、世界的に需要が回復する中、昨秋に発生した欧米メーカーのトラブルによるフォースマジュール(FM)や、コンテナ船不足といった背景もあり需給がひっ迫した状態が継続。1月初旬までに欧米各社のFMが解除されたことで、供給が正常に戻ると見られていた。しかし、2月に入り米国テキサス州に大寒波が到来し、停電や断水によりPVCメーカーが生産停止を余儀なくされているもよう。また、欧州でも原料要因や自然災害などで生産が止まっているプラントがあるようで、供給不足からこの先も需給タイトが続くとの見方が強まっている。

 地域別に見ると、インドはモンスーン期(6~9月)前の需要期に入っており、農業用パイプをはじめ、インフラ向けにも引き合いが強い。ただ、高騰した輸入価格に対し製品価格への転嫁が遅れていることから、需要家の買いが弱まり、日本品は価格が押し下げられる結果となった。しかし、PVCの市場環境は再び欧米品の供給不安が広がっていることに加え、コンテナ船不足による運賃高騰が継続しており、4月の価格交渉は一段高になると見られる。

 一方、中国も1月に需要の弱さが見られたものの、2月の春節休暇前には戻ったもよう。春節明けもコロナ禍の影響もなく、工場の稼働上昇に伴い国内価格も上昇している。世界的な需給ひっ迫を背景に、4月の中国向け輸出価格も強含みとなりそうだ。

 なお、日本の1月のPVC輸出は、前年同月比12.2%減の4万6400tと再び5万tを割り込んだ(VEC発表)。日本国内の需要が回復していることに加え、コンテナ船不足で物流が混乱していることが背景にある。日本メーカーにとってアジア市場は好環境が続いていることから、今後の輸出動向が注目される。