シリコン系負極材料添加剤を手掛ける米ナノグラフは11日、世界最高のエネルギー密度をもつ「18650円筒形リチウムイオン電池(LIB)」を実現したと発表した。Kurt(Chip)Breitenkamp代表は「これは電池業界にとって画期的だ」とし、「エネルギー密度は頭打ちの状態が続き、過去10年間で8%程度しか増加していない。1年足らずの間に10%の増加を達成した。これは1つの技術領域における10年以上のイノベーションに相当する」とコメントしている。
LIBはスマートフォンや家電、また電気自動車(EV)などに向け急速に普及しているが、稼働時間を延ばすために高容量化が求められている。しかし、エネルギー密度を上げるためにリチウムイオンの量を増やすと、放電の際にLIBが膨張と収縮を繰り返し劣化するといった課題があった。
同社は革新的な層状構造のシリコンとグラフェンの複合技術により負極材料添加剤を開発。従来のLIBのエネルギー密度は体積1ℓあたり500~600Wh程度だが、同社のシリコン系負極材料添加剤を使用したLIBは800Whと大幅に容量がアップする。特に航続距離の延長がカギとなるEVでは、1回の充電で稼働時間が従来に比べ28%も長くなる可能性がある。
ナノグラフは、前身となるサイノード・システムと、負極材料添加剤の研究開発を進めてきたJNCの出資により2018年に設立したジョイントベンチャー。これまで両社でシリコン系負極材料添加剤の共同開発を進めるとともにJNCの市原工場では量産化を進めてきた。すでに顧客に対しサンプル提供を開始しており、2022年度中に実用化を目指していく考えだ。