電力制限で中国の稼働が低下、需給タイトが影響
宇部興産は、ナイロン原料であるカプロラクタム(CPL)について、10月(上旬決め)の韓国・台湾大手向け契約価格を前月比110ドル高の2150ドル/tで決着した。9月は需給バランスが緩和したことで30ドル安となっていたのに対し、10月は一転して大幅な上昇となっている。
その背景として、中国において電力制限や環境規制の強化により工場の稼働が低下し、国内供給やアジア各国への輸出が難しくなったことが挙げられる。アジア地域では、世界的な原燃料価格の高騰から域外品の流入が減少していることもあり、需給バランスが一気にタイト化。安価な中国品に押されていた台湾品への引き合いが強まっており、台湾メーカー各社は提示されたオファー価格を受け入れたようだ。
ベンゼンとのスプレッドも、10月のACPが5ドル高と小幅だったことから、1165ドルに大きく改善。ただ、ユーティリティコストの上昇に加え、副生品である硫安の市況が低迷していることもあり、ラクタムチェーン全体で見ると事業環境はそれほど良くはないようだ。
一方、中国・SINOPECも、9月(下旬決め)の契約価格を前月比152ドル高(1200人民元高)の1981ドル/t(1万5800人民元)と大幅高で決着。さらに10月の仮価格についても、99ドル高(700人民元高)の2080ドル/t(1万6500人民元)で打ち出した。通常、台湾向け価格との差は毎月200ドル程度あるが、9月以降は100ドル以下にまで縮小している。国慶節休暇を挟んでも、中国では需給タイトが解消されておらず、CPL価格は強含んでいるようだ。
中国の10月初旬の稼働率を見ると、CPLは66%前後と9月(70%)から悪化。ナイロンチップも、汎用品に加え高付加価値品も低水準となり、62%と前月から3ポイント減少している。これまで70~80%を維持してきたヤーン(紡糸)についても、足元は54~55%まで急落した。ナイロンチェーン全体で稼働低下が顕著となっており、電力不足による影響が伺われる。
11月の契約価格については、ベンゼン市況が落ちていることや、中国で稼働再開の動きが出ていることもあり、ステイまたは小幅な上昇になるとの見方が強い。ただ、今期は厳冬が予想されており、ダウンジャケットなど冬物特需が出る可能性もある。また、ベトナムで厳しい外出規制が緩和されるなど消費回復への期待が高まっている状況。原油価格やコロナ影響など先行き不透明が強いものの、今後の需要動向が注目される。
なお、宇部興産の各工場については、タイ工場は中国品の代替需要が増加していることもありフル稼働を継続。スペイン工場は定修が明けて徐々に稼働を高めているもよう。宇部工場は、今月末まで片系列の定修中となっている。