理化学研究所 無溶媒で超分子ポリマーの精密重合に成功

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2021年12月2日

理化学研究所はこのほど、フタロニトリル分子からフタロシアニンの超分子ポリマーを無溶媒条件下で合成することに成功した。超分子ポリマーはモノマーが非共有結合で連結したもので、モノマーにまで切断・再利用できるため、持続可能な社会の実現に向けて有望だ。

一般に、超分子ポリマーは溶媒中で生成させる。無溶媒条件で生成した超分子ポリマーは、その構造を保ったままで使用できるメリットはあるが、反応が不均一になりやすく、鎖長や異種モノマーの順番をそろえた精密合成は不可能だと考えられてきた。

今回、アミド含有ジチオアルキル基を2個もつフタロニトリル分子を合成。それをガラス板に挟み、160℃で溶融させると、緑色の繊維状結晶が生成し成長した。紫外可視光吸収測定とマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析により、フタロニトリル4分子が環化してできたフタロシアニンで構成されていることが分かった。

偏光顕微鏡観察から高い結晶性をもつこと、粉末X線回折、X線小角散乱、制限視野電子回折による構造解析から、フタロシアニンがアミド同士の水素結合を介して一次元に連結した超分子ポリマーであることが分かった。また、金属塩を共存させると、金属フタロシアニン単独の超分子ポリマーが生成した。

フタロニトリルの加熱とともに、フタロシアニンの吸収波長700㎚の光吸収が増加。その増加挙動から、フタロシアニンが自己触媒的に生成している可能性が示された。190℃24時間加熱後のフタロシアニン収率は83%で、通常の液相合成の20~25%に比べて極めて高い。これは、ポリマー末端のフタロシアニン上に四つのフタロニトリルが水素結合と双極子相互作用で環状に配列する「自己触媒作用」のためだと考えられる。

これはリビング重合であり、フタロシアニンと金属フタロシアニンの順番や長さを精密に制御したブロックコポリマーを合成することも可能だ。通常の化学合成では反応を均一にするために大量の溶媒が使われるが、この反応系に溶媒を用いると、これらの特性は発現しない。

今回の結果は、ポリマーの精密合成に対する先入観を一掃し、持続可能な社会の実現に向けた理想的なポリマー製造プロセスの姿を示すもので、大きなインパクトを与えるものだとしている。