住友化学とマイクロ波化学は21日、メタンをマイクロ波により熱分解し、水素を製造するプロセスの共同開発に着手したと発表した。商業生産開始は2030年代前半の予定で、生産能力は年間数万tを目指す。
水素は、各種合成樹脂や有機化合物などの化学製品の原料として使用されるほか、燃焼してもCO2を排出しないためカーボンニュートラル社会の実現に向けた次世代エネルギー源の1つとして注目されている。
水素の製造方法のうち、温室効果ガス(GHG)の一種であるメタンの熱分解により得られる水素はターコイズ水素と呼ばれる。この製法の利点として、同時にカーボンブラックやカーボンナノチューブなど利用価値の高い固体炭素を得ることができる。
一方で、メタンの熱分解反応には膨大な熱が必要となり、製造時のエネルギーをいかに低減するかが大きな課題となっている。電磁波の一種であるマイクロ波は、分子や原子の振動により反応器内の目的物を中から直接かつ選択的に加熱できることから、反応器の外から加熱する他のプロセスと比較して、水素の製造に必要なエネルギーおよびCO2排出量の低減、製造設備の大型化が可能となる。
今回の共同開発では、住友化学が有する触媒および化学プロセスの設計技術と、マイクロ波化学がもつマイクロ波プラットフォーム技術を融合させる。2026年度までに省エネで高効率な水素製造プロセスの確立を目指しており、既にマイクロ波化学においてラボスケールでの実験を開始している。