帝人は11日、2023年3月期の連結業績を発表した。売上高は前年比10%増の1兆188億円、営業利益71%減の129億円、経常利益82%減の91億円、純損失177億円(同409億円減)だった。
セグメント別に見ると、マテリアルは増収・営業損失。アラミド繊維は原料工場の火災影響及び生産性悪化により販売量が減少。天然ガス価格上昇を受け価格改定を行ったがカバーできなかった。樹脂では、中国のコロナ禍の影響による顧客での稼働が低下。また世界経済減速の影響を受けて販売量が減少した。炭素繊維は、用途全般において需要が堅調で、航空機向けの販売量が増加した。複合成形材料は、設備故障による一時的な生産性悪化に伴う追加費用が発生したことに加え、労働需給逼迫による労働力不足が継続した。セパレータはスマホ向けが好調だった。
ヘルスケアセグメントは減収減益。「フェブリク」の後発品が参入し販売量が減少したことや薬価改定が影響した。繊維・製品セグメントは増収増益。産業資材分野は需要が堅調。衣料繊維分野は需要が好調に推移し、国内でも行動制限の緩和で販売が回復傾向となった。
ITセグメントは増収減益だった。2024年3月期の通期連結業績については、売上高3%増の1兆500億円、営業利益2.7倍の350億円、経常利益3.4倍の310億円、純利益130億円(同307億円増)を見込む。
内川哲茂社長CEOは「ヘルスケア領域は後発品の参入で減益となるが、マテリアル領域は、生産性の改善、販売価格の改定、増産/増販といった収益性改善策の発現や、欧米拠点で発生した一時的な生産トラブルの解消などにより増益を見込む」と語った。
一方、同社は、2023年度を課題3事業の収益性改善と将来の成長選択肢を決定する年と位置づける。内川社長は「長期ビジョンで掲げる「未来の社会を支える会社」に向け、ブレイクダウンして進むべき方向を定める。ヘルスケアでは、これまでの全方位から、より支えを必要とする希少疾患や難病といった疾病領域に事業をフォーカスすることを明確化した。マテリアルについても、地球環境の守り方について焦点を絞る。どの方向に伸びていくかを、これから1年かけて検討し、来年度の新中期計画の発表に結びつけたい」と語った。