デンカの3月期 価格改定超の原燃料・定修費で増収減益

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2023年5月12日

 デンカは11日、2023年3月期の連結業績を発表した。売上高は前年比6%増の4076億円、営業利益は19%減の323億円、経常利益は23%減の280億円、純利益は51%増の128億円の増収減益となった。

 同日の決算会見で今井俊夫社長は「需要減少に対し販売価格改定と円安効果で増収したが、定修や物流コスト、スペシャリティー化に向けたコスト増で減益となり、セメント事業撤退に伴う特別損失で純利益は大幅減となった」と総括した。

 セグメント別では、電子・先端プロダクツ部門は増収減益。堅調な高純度導電性カーボンブラックと窒化ケイ素に対し、電子部品・半導体関連の高機能フィルムや球状溶融シリカフィラーは低調な民生需要で数量減。球状アルミナは、xEVや5G関連の堅調に対し民生向けの減少で前年割れ。自動車向け金属アルミ基板やLED用サイアロン蛍光体も前年を割り込んだ。

 ライフイノベーション部門は増収減益。インフルエンザワクチンの能増、新型コロナとインフルエンザ抗原迅速診断キットは検査需要拡大で出荷量は増加したが、保険点数引き下げにより減収。その他検査試薬も、中国での検査需要減少が影響した。

 エラストマー・インフラソリューション部門は増収・営業損失。クロロプレンゴムは数量減少を価格改定でカバーし増収。肥料は数量が伸び、特殊混和材は前年並みだったが、セメントは価格転嫁が遅れ減収となった。

 ポリマーソリューション部門は増収営業損失。価格改定を進めたが、ABS樹脂や透明樹脂は自動車減産や中国経済の減速、MS樹脂はテレビやモニター向け需要の減少に加え、食品包材用シート関連の数量も前年割れ。さらに、スチレンモノマーの定期修繕コストも減益要因となった。

 2023年度の通期業績予想については、売上高6%増の4300億円、営業利益2%増の330億円、経常利益4%増の290億円、純利益72%増の220億円を見込む。増産体制構築や販売体制強化による費用増加はあるが、下期からの需要回復により利益は前年並みの見通しだ。今井社長は「今後八ヵ年で3600億円の戦略投資を行い、注力分野の成長とポートフォリオ変革を進める」との方針を示した。