理化学研究所(理研)はこのほど、数理創造プログラムの研究チームが、「体内時計」が温度によらず約24時間周期で時を刻むメカニズムには、生体分子の振動波形のひずみが重要であることを発見した。
同研究の成果は、これまでの体内時計の研究にはない新しい着眼点。今後、生体分子の時系列波形についての高精度な測定による実験検証が行われれば、波形の解析による体内時計の詳細なメカニズムの解明につながると期待される。
地球上の多くの生物は、地球環境の1日の変化に適応するために、約24時間周期の体内時計を持っている。生物の体内時計は、化学反応のネットワークによって構成。一般に、温度が高くなるほど化学反応は速く進むが、体内時計の周期は温度によらず約24時間でほとんど変わらない。この性質は、「体内時計の温度補償性」と呼ばれている。
今回、研究チームは、体内時計の数理モデルを解析し、化学反応の速さと体内時計の周期との関係式を導き出した。その結果、温度が高くなっても周期が安定であるためには、温度が高くなるとともに生体分子の振動波形がサイン波よりひずむことが必要であると分かった。
体内時計の数理モデルを含む多くの振動系について、波形のひずみが周期を長くする仕組みはまだよく分かっていない。非線形振動系において波形に着目した研究は少なく、同研究は理論的な観点からも大きく発展していく可能性がある。