《化学企業トップ年頭所感》東レ 日覺昭廣社長

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2021年1月12日

 昨年は新型コロナウイルス感染拡大で世界中の経済活動が同時に停滞するという事業環境下で、社員全員が日々の事業活動に真摯に取り組んだことに感謝する。経済再開に伴い世界の景気動向は回復基調にあるが、事業環境は依然不透明であり、事業課題と実行計画を全社で共有しベクトルを合わせ、確実に計画を達成していく。

  昨年5月に長期経営ビジョン「TORAY VISION 2030」(ビジョン2030)と中期経営課題「プロジェクト AP-G 2022」を発表し、取り組み始めた。2018年発表の「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」に示す、2050年に向けて東レグループが目指す世界を実現するために、地球規模の課題を革新的な素材の力で解決し企業価値を高めるためのマイルストーンで、「持続的かつ健全な成長」を実現するための統一指針だ。

 「AP-G 2020」は2020年度からの3年間にやるべき成長実現のための中期課題。主題の「強靱化と攻めの経営」は、持続的かつ健全な成長に向けた「攻めの経営」と、財務体質強化など「攻めのための守り(強靭化)」を両輪で実行するもの。新型コロナウイルス感染拡大による生産活動・消費行動・物流の停滞など、不確実性が増す事業環境下で、経営基盤を一層強化する方針だ。

 「ビジョン2030」の策定に合わせて、「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」という企業理念をはじめとする経営思想を「東レ理念」として体系化した。これは創業以来継承されてきた先人の意思と経営姿勢で、我々が受け継ぎ将来に伝えていく東レグループの財産だ。持続的成長をグローバルに実現するため、「東レ理念」の理解と共有に取り組み、全社員が東レグループで働くことに誇りをもてる職場風土の醸成を目指す。

 我々は素材メーカーとしてこれまでの経営姿勢を貫き、革新技術で新市場創出を進め、付加価値の高い製品を世界に提供していく。今年も東レグループ社員一人ひとりが先端材料で社会を変えるという高い志をもち、「事業を通じた社会貢献」という創業以来の「東レ流の経営」を実践し、豊かな社会の実現に貢献することに誇りをもって仕事に取り組むことができるようにしていきたい。

 

《化学企業トップ年頭所感》クラレ 川原仁社長

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2021年1月12日

 新型コロナウイルス感染拡大の世界経済への影響は今後もしばらくは続くと想定され、今年後半からの回復を期待する予測もあるが、まだ先行きは不透明といえる。移動や交流が制限される中ではあるが、できないことを嘆くのではなく、それらを解決する適切な手段を見出だし、どうすれば新しい形や方法で目的を達成できるかを考え、実践することが求められている。グループ社員の力を合わせて、難局を乗り越えていきたい。

川原社長
川原社長

 2021年度は、当社が2026年に迎える創立100周年に向けて、2022年度から始まる次の中期経営計画を策定する年にあたる。これまでに決定・着手した将来への仕掛け、戦略的投資を着実に遂行し成果を獲得するとともに、コロナ禍の影響で揺らいだ稼ぐ力の再検証を行い、着実な収益力の向上を図る一方で、構造的に収益力に懸念がある製品や事業分野については本質的な改善・改革も辞さない姿勢で臨まなければならない。

 次期中計に向けては、ITの戦略的活用によりデジタル・トランスフォーメーションを全社的な取り組みとして推進し、業務プロセスの改革や顧客起点の事業戦略を加速することで、競争優位の強化を目指す。

 さらには、持続可能な自然環境への貢献、生活環境の向上などの諸課題に対しても、企業としてどのように取り組むか、サステナビリティの観点を十分に踏まえて策定の議論を進める必要がある。「世のため人のため、他人(ひと)のやれないことをやる」という当社創業以来の企業理念を具体的に実行し、クラレらしいやり方で社会への貢献を果たすことが求められている。クラレグループの皆さんの自発的、積極的な参画と活発な議論を経て、クラレグループが一つになって進むべき方向性を示せるように充実した1年としていこう。

 また、クラレの新社長として、当社グループを「安全で、安心して働ける会社」「前向きな姿勢で活力と創造力のみなぎる企業」「誇りをもって働ける会社」にしたいと考えている。2026年の創立100周年と、さらにその後に続く将来を見通したクラレグループのあるべき姿を描き、それを実現するために努力をすることは、大きな挑戦であり喜びでもある。クラレの長い歴史の中でも、大きな節目となるであろう今後の数年間を皆さんとともに歩み、大きな目標に向かって邁進したいと考えている。

 

《化学企業トップ年頭所感》クレハ 小林豊社長

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2021年1月8日

 世界の新型コロナウイルス感染者は約8000万人におよび、ワクチンの開発と供給が急がれている。接種が行き渡るまで、私たちは感染拡大防止に取り組まなければならない。

 昨年は、社会にとって想定外の事態が常に発生しうること、企業にとって永続的な安定や繁栄は保証されたものではないということ、を痛感した1年であった。激変する世界にあって、当社が持続可能(サステナブル)な企業となるためには、技術立社企業として「クレハらしさ」をより強固にする必要がある。そのためには、外部環境を常に意識し、他に先駆けて変化に順応するとともに、「やり抜く文化(コミットメント)」を根付かせることが一層重要となる。

 安定した事業運営の実現に全力を尽くしつつ社会課題の解決に貢献し、差別化された製品・技術を開発して、一層の企業価値向上に取り組んでいく。

《化学企業トップ年頭所感》トクヤマ 横田浩社長

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2021年1月8日

 昨年は、新型コロナウイルスがもたらしたパラダイム転換の年ということに尽きる。現代文明をもってしても防ぎきれない自然の猛威を目の当たりにし、地球温暖化防止の動きが大きく進んだ。社会の分断や中間層の没落がクローズアップされ、行き過ぎた新自由主義の見直しの気運が高まった。テレワークの進展は従来の働き方や組織・人事システムのあり方に課題を突き付け、緊急経済対策の支給遅延が行政改革を迫るなど、あらゆる社会経済システムの構造的課題が浮き彫りとなった。

 当社にとって最大の環境変化は、「2050年カーボンニュートラルを目指す」という政府方針だ。当社も、世界の低炭素化の政策や新技術の調査・検討などを通して、低炭素化ストーリーを策定した。今年4月から始まる新中期経営計画は、それを色濃く反映している。日本の人口減少からも伝統事業の国内市場の縮小は不可避で、成長事業の拡大とニュービジネスの創出なくして会社の発展は望めない。

 石炭火力発電を競争力の源泉とする従来の戦略を根本的に見直し、「ネットカーボンゼロ」を前提に、2050年に健全に存続できる会社のありようをイメージし事業構造の転換を進める。具体的には「環境・健康・電子」をキーワードに成長事業を底上げし、海外ビジネスを拡大し、成長事業を主軸にした事業構造を目指す。一方、伝統事業はこうした活動を支えるキャッシュカウとして、エネルギー効率を最大限に高め低炭素化を図りつつ経済性を維持し、存在意義を追求する。

 成長事業の拡大には、マーケティングとイノベーションの機能強化が最大のポイントだ。また伝統事業、成長事業のいずれにおいても新技術や新プロセスの開発・導入は必須で、DXなどを活用して仕事を革新し、世界と戦う競争力を実現しなければならない。

 全役職員がより能力を高め、仕事へのあくなき情熱と遊び心をもって、勇気を出して一歩前に踏み出せれば、開発主導型企業へ脱皮し事業構造を転換できると確信する。先輩が残した仕事を土台に、将来のトクヤマを支えてくれる人々のための新しい土台を作ることが我々に課せられた最大のミッションだ。力を合わせて新しいトクヤマを作っていこう。

 

《化学企業トップ年頭所感》帝人 鈴木純CEO

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2021年1月8日

 新型コロナウイルスは社会の様相を大きく変え、帝人グループの事業も大きな影響を受けた。2021年を迎えたが大きな改善は見られず、ウイズコロナの環境をニューノーマルと捉え、感染予防を前提とした生活や業務を続けることが必要だ。負の影響だけではなく、遠隔医療などデジタル化で急速に進展する可能性が高まった事業もある。こうしたチャンスを確実に捉えるために、できることを可能な限り前倒しで進めたい。

 グローバル展開のため、各国の行動制限などの影響を受けやすい事業もある。特にマテリアル事業は大きな影響を受けたが、繊維・製品事業は医療用防護具など社会と事業業績に大きく貢献した。ヘルスケア事業やIT事業の下支え、北米自動車産業の想定以上の回復など、通期業績見通しは新型コロナ発生前の想定に近づきつつある。

 中期経営計画の取り組むべき社会課題は長期的視点で選択しており、長期ビジョンや戦略に大きな変更はない。各施策は、足元の状況を把握し最善な方法を検討して俊敏に行動に移す、変化への対応力が求められる。未来の社会から見て正しいと思える価値を提供する方法やタイミングは、再確認してほしい。

 社員に意識してほしいことは、まず「安全の確保」だ。安全に対する意識向上を徹底し、事故につながる要因を排除する。次は「認知力と俊敏性」で、変化の速い社会で状況を正しく認知し素早く対応する俊敏性だ。異なる視点や認知力をもつ人たちと話し、異なる意見に耳を傾け、正しいと思える認知を得たら速やかに行動に移し、変化する社会に合ったイノベーティブな価値の創造や提供につなげる。そして「リスクの捉え方とリスクテイク」だ。不確実な世界では、リスクを取らずに今までの事業環境に留まるという考え方では適応できない。イノベーティブな価値提供のためにきちんとリスクテイクした試みは、失敗とはしない形にしたい。

 我々は「未来の社会を支える会社になる」ため、持続可能な社会の実現に貢献することを目指している。社員が一丸となりたゆまぬ変革と挑戦を続け、社会とともに歩んでいくこと、さらには社会に先鞭をつけていくような会社になるということを新年の抱負としたい。

《化学企業トップ年頭所感》出光興産 木藤俊一社長

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2021年1月8日

 今年は創業110周年と経営統合3年目を迎える。多様な個性が一体となり、2050年に向けて新たに踏み出す1年にしたい。

 昨年はコロナの猛威による未曾有の危機への対応に明け暮れた。エネルギー需要の落ち込みや自動車、ディスプレイ需要の減少など、ほぼ全ての事業が影響を受けた。その中でエネルギー・素材を安定供給しライフラインを守るため、製造・物流・販売すべてで万全を尽くしサプライチェーンを維持した。

 一方、リモートワークは本社・支店を中心に一気に移行できた。働きがい・生産性・創造性を高めるべく環境整備を継続する。

 収益基盤事業では新SSブランドを今年4月から展開し、利便性の向上とネットワーク機能で地域の移動と暮らしを支える。製造関連もENEOS知多製造所関連の譲受など、近隣製油所の連携や石化との統合で付加価値向上と効率化を目指す。高効率ナフサ分解炉の新設は、構造改革に向けた効率化や省エネルギー化推進の1つだ。石炭事業では、石炭混焼可能なバイオマスの植生試験と木質ペレット化試験を開始した。

 成長事業では潤滑油製造工場と有機EL材料工場を稼働し、SPS製造装置も来年の完工を目指す。固体電解質の小型量産設備の建設など、蓄電池材料事業を次世代コア事業にする。次世代事業では再生可能エネルギーをEVにワイヤレス充電するMaaS事業の実証実験など、事業の創出を目指す。

 さらなる発展のための重点課題は「競争力強化に向けた構造改革」で、早期のコスト削減で競争力を強化する。目先の収支改善だけでなくコスト構造、事業ポートフォリオの変革を進め、組織・人員体制に加え根回しや調整に時間を要する企業文化・風土にもメスを入れ、デジタルを活用してビジネスを変革させる。

 そして「カーボンニュートラルへの取り組み」だ。脱炭素の潮流は当社への逆風に見えるが、我々のCO2に関する多くの知見とインフラを生かし、環境対策を事業活動に統合し競争力を強化し、成長していく好機にしたい。コロナ禍のような大きな環境変化に対しても、将来にわたりサステナブルな企業であり続けるために、当社の人の力を結集し、新たな「希望」につながる1年にしていく。

 

《化学企業トップ年頭所感》ENEOSホールディングス 大田勝幸社長

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2021年1月8日

 昨年から続く新型コロナによる行動や価値観の変化は現在も進行中であり、将来の情勢の正確な予測は困難だが、脱炭素化とデジタル化が急速に進んでいくことは間違いない。当社グループ長期ビジョンの前提は「低炭素循環型社会の到来」「デジタル革命の進展」「ライフスタイルの変化」であり、この方向性に変わりはなく、むしろ取り組みへのスピードアップが必要になる。

 こうした状況の中、構造改革を進め成長するためにも、「変革への挑戦」「スピードアップ」「成果へのこだわり」の3点を意識してほしい。

 まずは「変革への挑戦」だが、コロナ対応の中で、これまでの常識が通用しない世界や様々な制約がある世界であっても、思い切った変革と斬新な発想により商品やサービスを生み出すことで成長できること、ビジネスや働き方にも変革の余地が多くあることを学んだ。今を過去の延長線上にない未来を切り拓くチャンスと捉え、失敗を恐れず変革に挑戦していこう。

 「スピードアップ」については、昨年来、意思決定と業務遂行の迅速化のために権限委譲を進めてきたが、さらにスピードを上げる必要がある。そのためには、やらなくてもよいことの見極めとデジタルの力を最大限に利用することが重要だと考えている。また、この1年で在宅勤務が浸透し、コミュニケーションのあり方やオフィスの意義、時間の使い方を考え直す契機になった。新しい働き方で生まれたアイデアもスピーディーに実行してこそ初めて素晴らしい価値に繋がる。変化の激しい時代ではスピードがもつ価値はとてつもなく大きい。

 そして、「成果へのこだわり」では、働き方が変わっていく今こそ改めて自分の仕事の価値と成果を考える必要がある。変革を成し遂げるために最も重要なのは、実現しようとする強い意志と情熱だからだ。

 最後になるが、ESGやSDGsが、企業経営や私たち一人ひとりの取り組みの上で大きく注目されている。今回のコロナ禍で、どのような環境下でもエネルギーや素材の供給を通して経済や生活を支え続けることが、最大の使命であることを改めて認識した。将来にわたり、環境問題など変化する社会のニーズに応えながら、この使命を果たし続けていきたい。歴史を振り返えると、困難な時代にこそ、新しい時代を創る原動力が生み出されてきたとも言える。未来を決めるのは、今の私たちの行動である。創造と革新を通じて、私たち自身の成長、そして社会の発展と活力ある未来づくりに貢献していこう。

《化学企業トップ年頭所感》日本化学工業協会 森川宏平会長

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2021年1月7日

 昨年は感染症拡大により世界的に不安と混乱、経済の停滞が起こったが、デジタル化や働き方改革、カーボンニュートラルや循環経済などの持続可能な社会の志向など、起こるべき変化にスピードが加わった年だった。

 今年は良い変化をさらに進める年だ。

 米国も政権交代で環境・経済政策が大きく転換するとの予想だが、わが国もデジタル化、グリーン化を政策に掲げている。

 様々な産業で大きな変化が起こる可能性があり、それに対応して求められるものを提供するのが化学だ。デジタル化とグリーン化の発展にも、多くの化学製品が必要とされる。生活様式の変化や働き方改革でデジタル技術が進化するが、化学産業はその利用者であると同時に、カギとなる材料の提供もしている。風力・太陽光発電などの再生可能エネルギー創出や二次電池、軽量化材料など省エネルギーに資する製品も提供している産業だ。

 必要不可欠な材料を安定供給し社会の信頼に応えるには、「製造時」「製品自体」「使用後」の「安全と環境に対する配慮」が必要だ。日化協は化学品管理や低炭素社会実行計画などを最重要テーマとし、レスポンシブル・ケア活動を継続している。カーボンニュートラルへの貢献も、LCI(ライフサイクルインベントリ)やcLCA(カーボンライフサイクルアナリシス)などライフサイクルでの定量的評価で明確化する。

 昨年9月発表の政策目標「2050年カーボンニュートラル」は野心的ではあるが、持続可能な社会構築のためのあるべき姿だ。ケミカルリサイクル、CCU(CO2原料利用)、人工光合成など化学産業が進める技術革新への期待は大きくなる。この取り組みは、日本の化学産業が国際競争力を保つ上でも重要だ。

 日化協は、柱の1つであるプラスチックのケミカルリサイクルを推進すべく、昨年末に「廃プラスチックのケミカルリサイクルに対する化学産業のあるべき姿」を策定した。実現には、環境価値を認める社会醸成などの課題も多い。日本全体として力を発揮できるよう、政府・行政、企業と連携して取り組んでいく。

 今年も、化学産業はソリューションプロバイダーとして、経済成長と持続可能な社会づくりの両立のため、不断の努力とイノベーションを継続していく。

《化学企業トップ年頭所感》宇部興産 泉原雅人社長

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2021年1月7日

 昨年は世界中が新型コロナウイルス感染症に翻弄された。我々の日々の生活も、当社グループの各事業も大きな影響を受けたが、様々な感染防止策を徹底しながら事業継続に努め、需要の激変に対応できたことに心から感謝する。

 コロナ禍による景気変動に対し、レジリエントな強い事業・製品と、大きな影響を受けた事業・製品が明暗を分け、各部門の事業課題が明確になった。

 コロナが扉を開けた変化の時代は始まったばかりだ。我々は様々な変化を新たな日常として受け入れ、この時代をタフに乗り越えていかなければならない。まずは、皆が心身ともに健康であることを願う。会社としては、職場の安全確保や感染予防、従業員の心身の健康増進のための様々な施策に引き続き取り組んでいく。皆さんは個人の生活の中でも感染予防に留意しながら、適度な運動により在宅勤務が続くことによるストレスを溜めないなど、一層の安全と健康に努めてほしい。

 もう一点、変化が激しく先の見えない時代だからこそ、足元の対応だけにとらわれず、長期的な方向性を見据え、ありたい姿に向けて一歩一歩ともに前に進んでいこう。

 今年は2030年を目指した長期ビジョンを策定し、その実現に向けた中期経営計画の策定をスタートさせる。ポストコロナの世界はまだまだ見通せないが、ESGへの意識のさらなる高まりやDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展を前提とし、当社グループの経営構造の変化を踏まえた将来像を明確化したい。着実に歩み続ければ、道の先には必ず明るい陽の当たる場所が開けている。

 

《化学企業トップ年頭所感》JSR エリック・ジョンソンCEO

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2021年1月7日

 COVID-19は、我々の健康と経済に対して大きな脅威であり続けている。主要国の金融・財政政策により、ある程度衝撃が緩和されているとはいえ、世界中の人々の苦しみは察するに余りある。地政学的な面で多くの変化が見られ、気候危機の影響も加速している。

 JSRグループは、こうした不確実性の高い状況を見据え、真の意味でレジリエンスの高い組織を目指し、強固なインフラを構築する取り組みを加速させている。

 足元では、今後も大きな成長が見込まれるライフサイエンス事業と半導体材料事業について、品質と信頼性を最重要視しながらイノベーションを提供するという事業戦略の下、必要な投資を実施している。一方、一部の事業が依然として厳しい状況にあるため、引き続き構造改革を進める。

 将来に向けては、JSRグループがテクノロジー企業であるということに大きな期待をもっている。R&Dをベースにイノベーションを確実に商業化する能力を原動力に、マテリアルズインフォマティクス、バイオインフォマティクス、量子化学計算技術などの重要分野に投資を行ってきた。様々な新技術が人々の生活に影響を与え、多くのビジネスが再構築されることになるが、こうした変化の最前線に立ち続けていきたいと考えている。

 最後になるが、「サステナビリティ」は企業の長期的な強さの源泉だ。気候危機や社会変動の深刻度が増し、政府レベル、そして草の根レベルでも、人々の行動や興味が変化しており、こうした変化は企業が行動を起こすきっかけとなっている。

 JSRグループは、気候危機や社会変動、そして従来の株主価値を重視する姿勢からすべてのステークホルダーへ価値を提供するという方針転換を、脅威ではなく機会として捉え、企業の社会的価値を最大化させ、そうした価値をすべての事業活動に組み込んでいきたいと考えている。